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Heart of glass

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「だったらなんでそんな壊れそうなカバンを・・・」
「中学のときから使うとるねん。平気やと思うやろ?」
 その情報も確かなようで、奥のほうで多田が笑っているのが解る。
 担任もそれが確かだと解ったらしく、「しょうがない」とため息をつくと、午前中の内容を貴志惟から聞くようにと言ってきた。当の貴志惟は、「なんで俺が?」という不満げな顔で担任を見ている。担任はそんな貴志惟に気付いているにも関わらず、特に触れることもなく教壇へ戻ってしまった。担任のすすめに硝は期待と喜びに満ちた瞳で、じっと眉間にしわを寄せた貴志惟を見つめてくる。硝のほうが空気を読めていないのではないかと貴志惟は、先ほどの会話の内容に不満を募らせた。
 結局その推薦から逃げ出すことができなかった貴志惟は、昼食時のうちにさっさと説明を終わらせることにした。コンビニで買ったパンをカバンから取り出しながら、説明を始めた貴志惟だったが、その目論見はよりによって硝に中断される。不機嫌そうな貴志惟を無視し、彼は紺色の財布を見せながら進言する。
「これから購買まで弁当買いに行くさかい、ちっと待ってや」
「ふざけ・・・」と怒鳴りかけた貴志惟を残し、硝は足早に姿を消した。彼の怒りはいっそう増す。ふと視線を移すと、義章が笑いながらこちらを見ていた。貴志惟が「なんか用か」と口パクで尋ねると、義章が手招きをしてきた。
「なんだよ」
 そう言いながらだらだらと歩いてきた貴志惟に、義章は周囲を見ながら尋ねた。
「オクスケは?購買?」
「らしいな」
「そっか、珍しいね。あ、俺も購買に向かった友人待ちなの」
 義章が今の自分の状況を、なぜか楽しげに話した。が、貴志惟はすでに後半の話を聞いていない。なぜなら、義章の言った「珍しいね」という言葉がひっかかったためだ。いつもは弁当を持ってきているのに、今日は持ってきていないというのも気になる。鞄が壊れて遅刻しただけならば、弁当を用意できなくとも、コンビニで買うことは出来たはず。駅にも、駅から学校までの道にも、今の時代コンビニに困るところはあまりない。
 ここで、購買とコンビニを同じにしてはいけない。昼食時の購買は、学生数が多いこともあり、二つあってもかなり混みあうのだ。しかも種類はそれほど豊富でもなく、正直値段も少々高め。つまり、購買で買うメリットはほとんど無い。それでも買う人が多いのは、その味が保証されていることと、荷物を少なくしたい電車通学者が多いためである。義章が珍しいと言ったということは。貴志惟は念のため、義章に確認を取った。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷