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Heart of glass

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「しばらくって?」
「中二のときに一回だけ話しているのは見たかな?でもなんか、オクスケがキレて彼女の手をふり払ってたから・・・」
「あまり仲むつまじいとは言いがたそうだな」
 難しい顔をした貴志惟に、義章は爽やかすぎる微笑を送ってきた。それは肯定ととっていいのだろう。幼馴染みとの間に亀裂が生じた理由を、一か八かで尋ねる。すると義章は、残念そうな顔をして申し訳なさそうに返答をくれた。
「俺ね、小二から小五までの間は、父親の転勤でいなかったんだよね」
 つまり、事はその間に起こったということだ。そして義章は何も知らないということにもなる。軽く礼を言ってから、筆箱やメモ等のオリエンテーションに必要なものを取り出し始めた貴志唯に、義章はこぼすように言った。
「そういや、リンがいなくなってたっけ?」
「・・・リン?」
「そう。オクスケの幼馴染みの一人。すっげー美人なの」
 片思いの相手の突然の引越し。小学生ながら、なかなかドラマチックな展開ではある。だがもし本当に恋愛感情が少しでも入るなら、その辺りにとことんうとい貴志惟はいっきに不利な状況になってしまう。すでに義章の言葉に対し、貴志惟は「それがどうした」と言わんばかりの表情で見ているのだから。
 基本的にその日は、明日から始まる授業の説明だった。昼過ぎには終わるそうで、昼食後帰宅予定とのこと。にも関わらず、硝が来たのは三時間目の終わりだった。休み時間に笑いながら入ってきた彼は、走ってきたのは荒く息をしている。そんな硝に貴志惟はあきれた顔をした。
作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷