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Heart of glass

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 残すところは身長だけとなり、再び第一体育館に戻る。二組の影響で別室検査の時間がかかってしまったためか、三組が早々と到着してしまっていた。そしてその三組の女子の人数により、身長測定は非常に混みいっていた。暇を持て余した硝が、飽きた心を前面に出す。
「なんで女子は身長を最初に測るんやろか?」
「身長なら知られてもいいからだろ」
「でもな?ぱっと見で体重の予測ができてまう子も多いやんか」
 少々女性慣れしているかのような硝の発言に、貴志惟は不審な表情で彼を見る。
「できないだろ」
「できるで?あの子は平均体重より重そうやなとか、軽そうやなとか」
「ああ、その程度の範囲か。それなら分かるな。でも、推測と実際は違うんだろ」
「女心は難しいんやなぁ」
 ため息をつきながら、硝は感心したような言い方をする。しかし実際は、微塵も感心しているようには見えなかった。そこにあるのは、むしろあきれのようだ。思いのほか、彼は皮肉屋らしい。
 二十分もかかって、やっと二人の番が来た。すんなりと身長計につく硝に対し、貴志惟は少し渋ってからそこに立つ。そのせいで順番が少し入れ替わってしまった。
「奥椙硝、百八十六・二センチ」
「浅井貴志惟、百六十・六センチ」
 目に見て分かる差は、二十五センチ近くもあった。貴志惟は自分がひどくみすぼらしい気がして、さっさと身長計を下りる。そんな彼の気持ちを知らない硝は、「ちょい待っとって」といってよそへ行ってしまった。そのうちに、貴志惟はさっさと体育館をあとにする。
 貴志惟が姿を消したことにちっとも気付かない硝は、とある人物に向かって叫んだ。

作品名:Heart of glass 作家名:神田 諷