Ambassador of chaos K かなしき記憶
「どうして彼女が犯人だと?」
「話をしていた時に青酸カリの匂いがしたんですよ、あのハンカチから」
「そういう、齊藤さんは?」
「彼女の家系に注目してみたら、動機は一発でわかりましたよ……あなた方、彼女が幼少時代の記憶がないことを知っていますね?」
「ええ、しかも残っていたのは木村に対しての憎しみの記憶だけ……」
「木村は、彼女の父親ですよ」
「え!? お父さんを憎んでいたってことですか」
「そういうことになりますね、彼女は自分の父親を知らずに憎み、そして殺してしまった……」
「奈美さんには言うんですか? そのことを……」
「まさか、言いませんよ……私たちは、人を傷けるためにあるわけではないので……」
「そうですか……」
Kは、齊藤が何か言いたげそうにしていたのを見逃さなかった。
「誠一、先に車の所に行っててくれ」
「え……う、うんわかった」
Kと齊藤……混沌と光、この二人だけでしゃべるのは、初めてである。
「さて、何かいいたげですね……齊藤さん」
「Kが木村のパソコンから名簿を盗っていきました」
「K……いたんですね、木村が殺されてなお依頼は果たすなんて……」
「木島さん……私は、あなたがKではないのかと思っているんです……でも、今回は考える余裕がなかった」
「ほう? 俺がKですか……面白いですね」
「否定しないんですか?」
「しませんよ、そうかもしれないし、そうではないかもしれない……それを決めるのは齊藤さんなんですから」
「いつかあなたを捕まえて実刑を下してやりますよ」
「いつでも待ってます」
そう言ってKは、齊藤から離れ車で待つSの所へ行った。
作品名:Ambassador of chaos K かなしき記憶 作家名:鬼城 地球