MagicMushRoom
カレーの横に置いてあるのは、マジックマッシュルーム。
知ったのは1年程前ネット、2ちゃんねるで。
特にどこから飛んだって訳じゃないけど、アングラ系のスレを見てたらマジックマッシュルームの話題が出ていた。
合法で最強のドラッグ!!だとか、正直LSDより効き目良くね!?なんて盛り上がってるもんだから、興味があった。ただ、いわゆるチキンな自分は、自分がやるなんて心にも思っていなかった。
というか、ドラッグ自体いい印象が無いから苦手だ。
いつだったか、一寸の隙も無いような見るからにあなたは多分将来ヤクザ一直線ですね?という風格の先輩がシンナーをやっていて、たまたまその場に居てしまって、
「まこともどうやぁーーー!?成長するでぇ?」なんて言いながらビニールを渡された時には、ああこれはマズいなと思った。
学校の授業でも「ダメ!絶対!」と習っていて、なんでも一度では辞められずに廃人になってしまうらしい。
廃人になるのは困る。
なんて考えていたけど、ただ、もう今はどうでもよかった。
自殺する勇気は無いけど、死んでもよかった。
おれは、植物観賞用と書かれたマジックマッシュルームの箱を乱暴に開ける。
匂いを嗅いでみると、なんか古臭い匂いがした。
乾燥したキノコは、柄が少し青色に変色していた。
今までに無いくらい、心臓が音を立てているのがわかる。
ああ、自分は興奮してるんだ。
こんなに興奮なんかしたのは、何ヶ月ぶりだろうか?
何の為でもないのに校則を破りたいがばかりにピザ屋でバイク宅配のバイトをしてみたり、勉強を全くしなくなって、自分よりも明らかに下で今まで見下していたやつにまで、「まことはかつては頭が良かったがおれが追い抜いた。」みたいに噂されたり、しょうもない同じような毎日を、ただただひたすらに消費し続けて、自体は好転するばかりか、どんどん悪くなっていってる。
せっかく17歳というかけがえのない時間なのに、生きながら死んでるような感じだ。
だから、この一瞬の興奮は悪くない。
勇気を出して食べることなら出来る。
おれはやっと、10個あるキノコのうちの1つを噛んでみた。
苦っっ。
お茶の葉をそのまま噛んだ食感に似てる。なんか茶色が口に広がる感じ。
これは無理だと思って、カレーと一緒に、流し込む。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ。
驚くことに、やむやむしながら味わわないように食べると、本当に味がしない。
苦さは全くなく、一気に5つを食べれた。
マンションから飛び降り自殺をしようと思った時に、本当は飛び降りる気なんて全くなかったように、
本当は死なないと思ってる。
2ちゃんのスレでも、1回大体3つが良いと書いてあったし、だから10つは食べない。
どうにでもなれ!と願いながら、本当にどうにでもなってしまいそうな行動はしない。
だからこその5つ。
自分のチキンさがここでも出ていて嫌になる。
ただ、この瞬間のドキドキは本物だった。
時計を見ると、10時29分だった。
作品名:MagicMushRoom 作家名:makoto