ユートピア
「違う。怖くなんかない。
「死」は『ユートピア』に行くプロセスでしかないんだ」
「あなたやその友達は、人と触れ合って傷つくのが怖かったんでしょ。
だから他の世界に逃げようとした。自分が傷つかない努力をする前に。
人と分かり合おうとする前に。
要するに、あなた達は、臆病で怖がりで弱い人間なのよ。」
「違う! 俺も、あいつも臆病じゃないし怖がりでもない!」
「なら早く、私の前で死んで見せてよ。
どうせ『ユートピア』なんかには行けないと思うけど」
そう言われて、僕はまた、『死』の方向に振り返った。
死のうと思っていた。覚悟もできていた。怖くなんかないはずだった。
でも、もし本当に彼女の言う通り、『ユートピア』は存在しなかったら?
僕は何処に行くんだ?
天国? 地獄?
それとも彼女の言うとおり「無」になってしまうのか?
僕は急に怖くなって、その場に、『生と死の境界線上』でしゃがんでしまった。