ユートピア
「ほらね、怖いんでしょ?」
彼女の声がすぐ隣りから聞こえた。
顔をあげると、彼女はすぐ隣りに座っていた。いつの間にか、フェンスを越えて。
「私には、その覚悟があるわ。だって、この世界は退屈すぎて、つまらないもの」
そう言うと、彼女は微笑んだ。とても優しい微笑。
「待ってる」
彼女はそれだけ言って、そのまま飛び降りてしまった。
『生と死の境界線』をいとも容易く越えていった。
暫くしてドンッと大きな音が、下から聞こえてきた。同時に悲鳴が聞こえる。
彼女は死んでしまった。僕の目の前で。
彼女は何処に行った?
『ユートピア』か?
それとも天国?
はたまた「無」になってしまったのか。分からない。