顔合わせ
「七時から、待っていました」
「そんなに早くから……」
祐樹は絵里香に対して恐怖を覚えた。
「上のバーへ行きましょう」
毅然とした態度の絵里香は笑顔を見せなかった。祐樹は彼女の美しさに圧倒され、気後れを覚えていた。
「どんな話ですか?」
と、三十七階のバーでカクテルを注文したあと、夜景を眺めながら祐樹は尋ねた。
「……」
ピアノの演奏が終了し、別の曲を男のピアニストが奏で始めた。
「話したいことがあると云いましたね。だけど、話し辛いことなんですね?」
「……」
カウンターに二種類のカクテルのグラスを、外国人のバーテンダーが並べた。
「すぐに思い出せなかったのは、凄くきれいになってたからですよ。五年前は野生児みたいな印象だったから。山ばかりやってたんですね。あの頃は……」