顔合わせ
その山から下りて間もなく、祐樹は勤めを変えた。
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翌日の昼過ぎに絵里香からの電話があり、祐樹は驚かされた。絵里香は祐樹に会ってもらいたいと云う。その理由は、急いで話したいことがあるからだと云うのだった。
当初は午後七時半に会う約束をしたのだが、残業のあとで会うことになった。裕樹の同僚の男が、急に体調不良を訴えて早退したからだ。その旨午後五時過ぎに絵里香に連絡し、会う時刻を午後七時半から午後九時半に、祐樹は変更させてもらった。彼は会う日を改めたいとも云ったのだが、絵里香は今日中に云いたいことがあるとしてその提案を許さなかった。
午後九時半になる前に彼がそのホテルへ行くと、絵里香は既にロビーで待っていた。スーツ姿の彼女は、イヤリングをきらめかせていた。彼女は姉よりもスタイルが良く、姉よりも美しいと、祐樹は思った。
「何時から?」