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novelistID. 29058
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顔合わせ

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「今は年に一度か二度くらいしか山には行ってません」
「あの頃は、月に二度も三度も行ってたんですよね。今は体型も変わりましたね」
「……やっぱり、云うのをやめます」
「……そうですか。ぼくも、云おうとしていたことがありますけど、三十年後にしますよ」
「じゃあ、わたしも、三十年経ってからにします」
 裕樹は一時間後に優奈と逢うことに、恐怖を覚えていた。彼女の妹とここで会ったことは、黙っていようと思った。そして、数年前に観た映画のビデオを思い出した。
「祐樹さん」
「えっ?」
「映画で『卒業』というのがありましたね。観ましたか?」
 裕樹が思い出したのもその映画だった。ダスティン・ホフマンがあの有名なラストで、花嫁を奪い取ったことに成功したものの、笑顔になろうとするけどなれず、これからの不安を暗示させていた。花嫁役のキャサリン・ロスも、隣のダスティン・ホフマンを愛おしそうに凝視めるが、やはり不安をその表情に宿していた。
「大昔の映画ですね。映画はやっぱり、新しいのがいいですね。3Dにはそれ程魅力を感じませんけどね」

                了







  





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