合コン
どの娘も「お嬢様」という雰囲気で、田野倉はレベルが高いと思った。ほかの五人の男たちもそう思ったらしく、嬉しさを顔に出している。田野倉だけが仏頂面だった。
内藤は座る場所を男女がそれぞれ異性に挟まれる形に指定して行った。大きなテーブルの席に座れるのは十人で、田野倉だけ別の二人用の席に、ひとりで座らされた。
「田野倉さんごめんね。遅れて来るという話だったからさ、そういうことにしていたんだ……約一名飛び地に居ますが、女性の中でご希望のかたは、そちらへ移動しても結構ですよ。遠慮しないでくださいね!」
内藤がそう云うと、看護師の卵たちは微笑んだだけで、勿論動こうとはしなかった。田野倉は怒りが爆発しそうになりながらも、帰ろうかどうしようかと迷っていた。彼は耐えることに決め、ワインを飲み始めた。
午後八時半でお開きだというのに、田野倉は午後七時半まで、ピザを食べながら、ワインを飲みながら、買ったばかりの本を読んでいた。その文庫本は恋愛小説だった。突然の夕立のために、新宿のホテルのロビーで雨宿りをしていた男女が、もう一度会う約束をして……。というような話だった。四十男は仕事の問題で悩んでいた。体調がおかしくなっていた。心配してくれた相手は、町田の山奥の農家の、二十歳の娘である。田野倉はその作品に心を鷲掴みにされていた。田野倉は自分もこんな小説を書いてみたいものだと思った。
「こんばんは。ここに座ってもいいですか?」
田野倉の目の前に、医療短大生のひとりが立っていた。五人の中で一番田野倉の好みに合う顔だった。