合コン
いつも忙しい土曜日が、意外なことに割と暇だった。田野倉が午後五時半に社屋から出たとき、先週の土曜日は終電で帰ったことを思い出した。まだ暗くなり切らないうちに雑踏の中を歩いていると、勤めを解雇されたようで心もとなかったが、二十歳の医療短大生たちに会えるのだと思うと、夢を見ているような気持ちになった。
田野倉は午後六時半にそのレストランに入った。そこには大きな楕円形のテーブルがあり、そこに内藤と竹山が居た。照明は少し暗いが、落ち着いた雰囲気だった。
「あれ?!田野倉さん!今日は来れないと思ってたよ」
内藤はまるで奇跡が起きたように驚いた。
「仕事が暇だったんですよ。雨が降ったら私の責任です」
「田野倉さんがそういうこと云うんだね」
竹山は云ってから大げさに笑った。内藤も少し遅れて笑った。
「無理だと思ってもう一人呼んじゃったよ。失敗だったな。田野倉さん。ペアになれないかも知れないね」
「呼んだのは誰?」
田野倉はかなり憤りを覚えていた。
「山村さん。彼も来たいって云うから……」
山村というのは、絵画サークル「Y」の初代会長で、サークルの創始者ということになっていた。清掃局のトラックの運転が仕事だという。
持田と高松と山村が現れてすぐ、医療短大生の娘たち五人が静かに入って来た。時刻は午後六時三十五分だった。