合コン
田野倉が呼ぶと内藤は無視したようにも見えたが、そうではなく、彼は竹山との話に夢中だったようだ。看護師の卵たちの話で盛り上がっているのだった。
「持田さん。内藤さんを呼んでもらえませんか」
「合コンの相談かな。内藤君!田野倉君が話したいって」
「田野倉さん?何かな?合コンに来るの?」
内藤は少しだけ迷惑そうな顔で訊いた。
「たまにはそういうのもいいかなって、思ってるんです」
「あれ?でも、土曜日は仕事じゃないの?」
「そうなんだけど、ちょっと遅れて行きたいんですよ。だめですか?」
「八時頃だとお開きかも知れないよ」
「七時には行きますよ。どうでしょうか」
「うーん、そうね。そのくらいだったら、全然いいんじゃないの。お待ちしてますよ」
「すみません。じゃあ、そういうことで、よろしくお願いします」
田野倉は二十八歳になった今も、合コンどころか女性と雑談をしたことさえ、殆どなかった。そういう男なので不安だが、怯えてばかりいるうちに人生が終わってしまうのは寂しいと、十年も前から思っていた。それで最近、思い切って車を買ったのである。車の助手席に女性を乗せてドライブをしてみたい。そう思って買った車は、真っ赤なスポーツカーだった。そういう車なら、乗ってみたいと思う女性がいる筈だと、思ったのだった。
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