合コン
「この前、山で知り合ったんだけど、ちょうど五人だな。相手は看護師の卵なんだ」
と、内藤が云った。
「それは聞き捨てならない情報だな。そういうことなら、何をさし置いても顔を出すよ」
表情が一変したのは高松だった。彼は二十九歳の会社員である。
「持田さんは、どうする?」
と、田野倉が訊くと、
「行きますよ!行くっきゃない!」
持田は三十歳のマッサージ師だ。
「俺も行くよ。いつの話?場所はどこ?」
最も積極的になったのは、竹山かも知れないと、田野倉は思った。竹山も当然それに参加することになった。
内藤の話では、相手のグループは全員が二十歳くらいだという。日取りは明後日の土曜日で、集合時間は午後六時半。合コンの場所は、横浜駅の近くのイタリア料理店である。
田野倉は印刷関係の仕事をしている男である。彼は絵のグループの中では最も地味な存在だと思っている。リーダー格の内藤は、グループ登山を計画したり、スケッチ旅行やスキーツアー、テニスツアーなどを企画したりしていた。田野倉は土曜日も出勤が多く、そのようなことに参加したことがない。彼は社教で絵を描いたあと、居酒屋へ行くときにだけ、内藤たちと行動を共にしていた。
今回の合コンに顔を出すことは、だから異例だった。土曜日に出勤すると、夕方に退社できるのは早くても午後六時なので、横浜に六時半となると絶望的だった。
「内藤さん!」