合コン
合コン
田野倉誠は、毎週木曜日に『社教』の講習室で油絵を描いている。彼が全部で二十五人を数えるその絵のグループのメンバーの一員になったのは、去年の秋からである。
今日は先週と同じ女性メンバーの一人をモデルにして、人物画を描いた。紅いチャイニーズドレスを着て、椅子に座っている女性は、年齢が二十八歳らしい。同年齢の田野倉は、その姿を或る程度魅力的だとは思ったが、描いた絵は失敗作と呼ぶしかないようなものになってしまった。ほかのメンバーの作品を見ても、稚拙なものばかりだった。
午後八時半に集まった社教の近くの居酒屋で、いつもそこに顔を出す独身男のメンバー五人が、異口同音に嘆きながら口にした結論は、人物画は難しいということだった。だから当初はいつになく、飲んでもあまり盛り上がらなかった。
話が途中から異様に盛り上がったのは、内藤という男のひとことのせいだった。
「あっ!忘れてた。今度、合コンをしたいんだけど、参加したいヤツ居る?」
内藤は郵便局で働いている二十七歳の男で、頻繁に登山をしているという。
「相手がオールドミスの集合体だったら、参加しないよ」
笑いながらそう云ったのは、竹山だった。彼は新聞配達をしながら大学に通う苦学生で、年齢は内藤と同じ二十七歳である。