合コン
「だけど、考えてみてください。この世の中の大多数は教師でも、医師でもないんです。だから友香さんが看護師になっても、少しも恥じることはないんですよ」
「わたしもそう思います。だから、看護師になることにしたんです」
「じゃあ、とりあえず、今日は愉しい休日を過ごしましょう」
「田野倉さん。田野倉さんは、わたしの夫になってくれるんですか?」
「私は、望むところですよ」
田野倉はかつてなく嬉しい気持ちになっている。
「本当ですか?」
「はい。本当に、そう思っています」
「そうですか。ありがとうございます」
友香はやっと笑顔になった。田野倉も笑顔になり、車を発進させた。
それにしても、田野倉はキツネにつままれたような気分だった。初めての合コンが昨夜で、翌日の朝に結婚相手が決まりそうな話になっている。人生とは、そんなものなのだろうか。世の中に無数に存在する夫婦というものは、そんな形で出現するものなのだろうか。そう思うと、彼は不思議でならなかった。