合コン
「田野倉さん。スピード出すんですね」
速度計の針は百八十キロの辺りを指していた。日曜日の朝なので周囲には一台も車が走っていない。油断していた。彼はアクセルから足を放した。百キロまでスピードが落ちてから或るスイッチを押す。
「失礼。未来の伴侶を乗せていながら……もう、アクセルを踏まなくてもずっと同じスピードです」
田野倉はわざわざ右足を持ち上げて見せた。
「どうなってるんですか?この車」
「オートクルーズという仕掛けがついているから、これを使うと右足が疲れません」
「そうなんですか。凄い車ですね」
友香は表情を一変させた。
「ところで、友香さんはこれまでに付き合った男性は何人ですか?」
「まさかぁ、そんなひといるわけないじゃないですか!」