合コン
「ゆ、友香さんの家はどこでしたっけ?」
田野倉のことばが、友香の耳には届いていなかった。
「わたしの家には問題があるから、田野倉さん。わたしをお嫁さんにしてくれませんよね」
田野倉は耳を疑った。確かに彼も、友香と結婚したなら幸せな家庭が築けるかも知れないと、昨夜は考えたりもしたが、友香のほうでも同じことを考えていようとは、夢にも思わなかった。
「ちょっと待ってくださいよ。友香さんの家の問題というのは?」
「わたしだけなんです。教師でも、医師でもないのは」
「何を云ってるんですか。看護師は立派な職業です。教師にも、医師にも負けてませんよ」
「でもね、わたしの両親も、兄弟も、親戚も、わたし以外は全員、教師か医師なんです」
「……友香さん。確か、友香さんは末っ子でしたね。だったら結婚して家を出てしまえば、職業なんて関係ないでしょう」
「そうですよ。そうなんです。でもね、お正月とか、法事とか、あるでしょう。そういうときに家に帰ったら、必ず云われるんです。あなただけは教師にも、医師にもなれなかったわねぇ、って」