合コン
走り出した車の中で、友香は黙っている。田野倉はそのせいでいつもの暗さを取り戻していた。十分程度経ってから、田野倉は間違いに気付いた。自分が明るい声で話すべきだと、気付いたのである。そこに気付かせたのが友香だと思う。そう思うと急に嬉しくなった。
「友香さんは普通じゃありませんね」
「えー?!どうしてわかったんですかぁ?」
「おっとー。予想外の反応に、田野倉さんは、戸惑っておりますよぉ」
「誰かから聞いて、知ってるんですよねぇ、多分」
「いえいえ、滅相もない。誰からもなーんにも聞いてません」
「そうなんですかぁ。じゃあ、わたしから告白しますよぉ」
「告白ですかぁ。わたしの人生の中で、女性から告白されるなんて、初めてですぅ」
そのあと躊躇っているのか、友香は沈黙した。田野倉は仕方なく今日の予定を、噛みながらたどたどしく説明し始めた。間もなく田野倉は異変に気付いて黙った。友香が泣いているのだった。田野倉は慌てて減速し、路肩に車を停止させた。
「わたしの家のことです」
友香は涙声で云った。