ハニィレモン・フレーバー
3.flavor Who are you? -大人のミリキ-
「誰だ、おまえ」
「え」
待ち合わせた都心の駅前で出会った人物は、別人だった。
前にみたのは確か金髪の筈なのに、今は真っ黒髪を後ろに流し、三つ揃えのスーツを着ている。スーツである。
えっとと、相手は頬を掻く。透の反撃は続く。
「なんでそんなかちりとした格好をしているんだ。前なんてチャラチャラした遊び人みたいな恰好をしていたじゃないか。しかもなんで眼鏡しているんだ。あ、しかもブランド物だ」
「だからね、ちょっと落ち着いてよハニィ」
目をぱちぱちと瞬いて、ハニィと呼ばれた透は相手を見る。
「…おまえ、やっぱりクレイジーなのか」
「その呼び名やっぱりなんか面白いね。ちょっと変装しているけど、おまえにチューしたカイナだよ」
よしよしと頭を撫でようとした手を逃れて、透は改めてカイナを見る。
「なんでそんな奇天烈な格好しているんだ」
「そんなキテレツではないと思うけど。今日はお仕事の打ち合わせだったんだよ。おまえが急にメールくれるから直で来たの。どう、カッコいい?」
カイナはモデル立ちで構えて見せた。透は半眼になる。
「道化がスーツ着て、笑いを取りに来ているようにしか見えない」
「何気に酷いよね、おまえって。大人のミリキなのに」
「ミリキ? まさか魅力じゃないだろうな」
「そうそれ」
透が白い目で見つめるもまあいいじゃんとカイナは笑い、腕を透へと伸ばす。
「連絡くれてうれしかったよ」
伸びてきた腕が透の首に絡み、頬にキスが落とされる。
帰宅ラッシュの人々が全員注目するような背負い投げが披露され、眼鏡が割れた。
作品名:ハニィレモン・フレーバー 作家名:ヨル