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てっしゅう
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novelistID. 29231
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愛されたい 第十章 新しい家族

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高志はまず自分たちのことから話し始めた。


「おじさん、美咲さんとずっと話して・・・俺たち兄弟になるように気持ちを切り替えようってなったんだ。直ぐに本当の兄弟のようには出来ないけど、みんなが家族になれることで気持ちがひとつになってゆけるって・・・だから、母さんと籍を入れて欲しいんだ」
「高志くん、美咲のこと好きじゃないのか?諦められるほどの気持ちで付き合っていたのかい?」
「そんなことないよ。俺だって将来は一緒になりたいって思って付き合っていたよ」
「今はどうなんだ?」
「今?気持ちは変わらないよ」
「聞いてくれ。高志くんや美咲を悲しませてまで智子さんと結婚しようなんて考えてない。俺たちも本当に好き同士なんだ。婚姻届なんていう紙切れに気持ちが振り回されるようなことはないんだよ。二人で逢っているだけで幸せなんだ。傍に居てくれるだけで俺はいいんだ。智子さんもきっと同じ気持ちだから、高志くんが無理をするようなことはしないでくれ。美咲を辛い気持ちにさせないで欲しい」

横井は高志の気持ちが涙が出るほど嬉しいと解っていたが、男と女は結婚がすべてじゃないと教えたかったし、何より美咲がこれ以上悲しい思いをすることだけは避けたいと願っていた。

「おじさん・・・母さんは幸せだって思ったよ。父さんとの辛かった時間をこれから埋めてゆくことが出来るんだね。おれ、母さんに幸せになって欲しい・・・」

高志の切ない言葉が横井の胸に響いた。

「約束するよ。絶対に幸せにする。高志くんに言うのも変だけど、お母さんを私に下さい・・・」
「横井さん・・・母をよろしくお願いします」

ゲームをして遊んでばかりいた少年が男と女のことにこれほど敏感で理解がある心を持っていたことに正直横井は驚かされたし、美咲も高志の男ぶりに惚れ直したところがあった。子供というのはきっと親を本当によく観察しているのだろう。父親のように自分はならない!その思いが高志を優しい人間に成長させていたのであろう。

「高志くん、智子さんはここに来ている事を知っているのかい?」
「いいえ、話していません」
「内緒にしてたのか・・・おじさん電話していいかなあ?」
「何を話すんですか?」
「せっかく来てくれて話し合えたから、智子さんも呼んでいろいろ話をしたいって思ったから」
「じゃあ、俺から電話します」

高志は家に電話をした。

「母さん、内緒にしてすまなかったけど今、横井さんの家に来ているんだ」
「えっ?どうして」
「うん、美咲に話があって・・・」
「何を話してたの?」
「その・・・母さんと横井さんが結婚したら兄弟になるから、今までのようには付き合えないよって言いに来たんだけど、おじさんにダメだ!って言われちゃった」
「当たり前でしょ、そんなこと何故言ったの?」
「母さんが横井さんとちゃんと籍を入れて欲しかったから」
「高志・・・気持ちは嬉しいけど、横井さんと気持ちは同じよ。前にも言ったでしょ?美咲ちゃんを大事にしてくれないとお母さんもう横井さんとは付き合えなくなるから」
「それは嫌だよ。解ったから、考え直すよ。横井さん話がしたいからって言ってるよ。代わろうか?」
「そうなの。じゃあ代わって」

「智子か。すまんな高志くんに厳しいこと言ってしまって。なあ、時間があるなら話さないか?高志くんを送りがてらそこに行っても構わないかな?」
「今から?」
「ご飯は三人で済ませてゆくよ。3時頃にどうかな?」
「有里がその頃帰って来るって言ってたから、ちょうどいいわね。ちゃんと話しないといけなかったからお願いできるかしら」
「解ったよ。じゃあそうする」

横井は高志と美咲を連れて食事を済ませ、智子の家に向かった。

「ただいま」有里が帰ってきた。
「有里、急なんだけど、今から横井さんが来るのよ。美咲ちゃんも一緒に」
「そうなの・・・話するのね、皆で」
「そう、いいかしら?」
「もちろんよ。高志は?」
「あの子も一緒に来るの」
「一緒に?なんで」
「朝から向こうの家に出かけていたみたいなの。美咲ちゃんと話していたらしいけど、ここに来てから決めるって言ってたわ」
「何を決めるの?まさか別れるって決めたんじゃないでしょうね?お母さん」
「そうじゃないわよ。そんなこと横井さんだって許さないから」
「安心した。高志って妙に男らしいって言うことを勘違いしているところがあるから、心配してた」
「そうね・・・お母さんはそういうところ好きなんだけど、有里は嫌なんだね」
「嫌って言うより、出来ないこと言うなって思えるのよ。まだ18でしょ・・・甲斐性だって無いのに」
「厳しいのね、お姉さんは・・・ハハハ」
「笑い事じゃないわよお母さん!高志に甘いんだから・・・」

有里は誰に似たのだろう。口煩くなってきた感じがする。少なくとも自分には似てないと智子は心の中でくすっと笑った。

「母さん、ただいま」高志の声が聞こえた。
「横井さん、すみませんお手間取らせて・・・どうぞ上がって下さい。美咲ちゃんもね」
「お邪魔します・・・へえ〜いい家だね。俺のところみたいなボロ家とは違うなあ」
「横井さん、お父様たちの家でしょ?いけませんわよボロ家だなんて仰っては」
「だって本当だもの。なあ、美咲?高志くんもそう思うだろう?」
「おじさん、ボクは好きですよ。なんだか落ち着く感じがして」
「そういう言い方もあるか、ハハハ・・・」
「ねえ、有里は初めてよね?」
「病院でお見かけしましたから初めてではないですよ。でも話すのは初めてかな・・・横井です。宜しくお願いします」
「有里です。今年二十歳になりました」
「そう、お母さんに似て美人だね」
「おじさん、お姉ちゃん外見は綺麗だけど、意地悪なんだよ」
「高志くん、そんなふうに言っちゃダメだよ。高志くんのこと好きだからいろいろと口出しするんだよ。ありがたく思わなきゃ」
「そうかな・・・俺にはいじめて楽しんでいるとしか思えないんだけど」

智子が「いい加減にしなさい」と高志に注意して「大切な話があるから」と皆を座らせた。

「お母さんから話すわね。まず、有里と高志に横井さんと暮らすこと許して欲しいの。まだ離婚したばかりで勝手なこと言うけど、そうしたいの」
「そんな事言わなくても解ってるよ。なあ、お姉ちゃん?」
「お母さんが決めたなら有里は反対しないよ」
「ありがとう。美咲ちゃんは私がお父さんと一緒になること許してくれる?」
「おばさま、前に言いましたけど望んでいることですから、嬉しいです」
「ありがとう。横井さん、あなたから話して、籍のこと」
「ああ、有里さん、高志くん、これから宜しくね。美咲とも仲良くしてやって欲しい。俺たちは横井行雄と楠本智子でずっといるからそのこと覚えておいて欲しい。席を入れないからといってお互いに好き勝手したりはしないよ。今ここに居る5人が家族同然に暮らせるようにしたい。そして、高志くんと美咲が将来結婚しても同居したいって思われるようにしたい。有里さんだって、ご主人に堂々と俺たち夫婦だって言えるようにする。これからどうやってゆくか学校のこともあるからみんなで話して決めたい。高志くんからどうしたいか話してくれないか」