小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

愛されたい 第十章 新しい家族

INDEX|3ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

「ここなの?」
「そう、おじいちゃんの家なの。今日は出かけていて誰もいないの。お父さんは昼頃帰って来るって言ってたけど」
「じゃあ、二人だな」
「うん」

玄関を入って、二人はテレビの置かれているリビングの床に座った。美咲は飲み物を持ってきて高志に勧めた。
「美咲・・・今日は話があってきた」
「解ってるの。私たちのことよね」
「そう。たくさん考えた。美咲のこと好きだって言う気持ちに変わりはないよ。初めに言っておくけど」
「嬉しい。私も変わらないよ」

少し間が空いた。高志が言葉に詰まったのだ。美咲は傍に寄って来て抱きついた。

高志はますます言えなくなってしまった。美咲は今日までずっと自分に言い聞かせてきた。学校で会っても、普通にしていた。メールも電話もしないでいた。父の結婚の妨げになるのなら、高志との付き合いは終わりにしようと思い続けてきた。高志から逢って話したいと言われ、自分の気持ちを決めようと今日が来た。

「放してくれ・・・美咲、話せなくなるじゃないか」
「いや!・・・やっぱり、いや・・・高志さんと何もなくなるなんて、出来ない」
「美咲も解っていたんだろう?おれと同じように我慢しようって・・・おれだって嫌に決まっているじゃないか。どうしたらいいのか解らなくなってきた」
「お父さんとおばさまが結婚しても、私と高志さんが仲良くすることは無理なの?好きでずっと一緒にいられないの?」
「血が繋がっていないとは言え、兄弟になるから、結婚も出来ないし、子供も生めないよ。それでも好きで居たいなら、一生二人きりで生きるしかないよ」
「一生二人きりで・・・それは無理よね?」
「当たり前だろう!そんなのは映画の世界だけだよ、やれるのは」
「高志さんはどうしたいの?どうするつもりで決めてきたの?」
「おれ達さ、兄弟になったらずっと一緒に仲良くできるんじゃないかって考えたんだ。初めは辛いだろうけど、お互いに一緒に暮らしていればだんだん気持ちもほぐれるだろうし、母さんや、横井さんの楽しそうなところを見ていると家族になってゆくって感じられると思うんだ。美咲とも同じ家の中の家族って感じられればいいなあって思うんだよ」
「手を繋いだり、時々キスしたりぐらいは構わないの?」
「う〜ん、どうかな。おれとお姉ちゃんはしないよ」
「手も繋がないの?」
「繋いだこと無いね。裸は見たけど・・・」
「ウソ!どういう事?」
「子供の頃一緒にお風呂に入ってたから、ハハハ・・・」
「バカ、こんなときに冗談言って」
「怒るなよ。怖い顔して話してても先に進まないから、気持ちをリラックスさせたのさ」
「私高志さんのこと忘れられるか自信ない」
「俺だってそうだよ。でも、時間がきっと解決してくれるよ。まずは俺とお姉ちゃんと美咲の三人で今の家で暮らそう」
「三人で暮らすの?おば様はどうされるの?」
「そのことなんだけど・・・」

美咲は何故三人なのか解らなかった。

「今俺の家には父さんは居ないんだ。出て行ったからな。母さん横井さんと一緒にこの町で住んだらいいって思うんだよ。俺たちは名古屋のほうが便利だし、今の家だって大学卒業するまで父さんが売らないって約束してくれているから使えばいいって思うんだ」
「おば様とお父さんだけでずっと暮らしたら、高志さんが大学を出たらどうなっちゃうの?」
「その時はお姉ちゃんだって家を出られるだろうし、就職したら俺だって一人暮らし出来るから問題ないよ。美咲は一緒に暮らしても構わないよ。一人なら何とかなるだろうから」
「嫌よ、そんなこと・・・今はいいけどそのときが来たらみんなバラバラになってるんじゃない?そんなのおかしいよ、家族は一緒って言ってるのに」
「俺たちが一緒だと、母さんも横井さんも気を遣って仲良く出来ないって思うんだ。一応新婚だよ。美咲だって結婚して直ぐに同じ家に両親が居たら気を遣うだろう?違うかい」
「二人だけの部屋があったらそれでいいって思うけど違うの」
「そんなもんじゃないぜ、きっと。俺が考えたことだから、母さんも横井さんもなんと言うか解らないけどね。美咲が賛成してくれたら話そうって思っているんだ」
「私は、高志さんと一緒なら・・・それでいい」
「そうか、じゃあ話すよ。横井さんが帰ってきたらまず話す。いいだろう?」
「うん、お父さん、なんて言うだろう・・・ねえ、帰ってくるまで私の部屋に居よう」
「何で?」
「どうして何で?なんて言うの。もう二人で仲良くすること出来ないんでしょ?今が最後にしたい」
「ダメだよ。そんなことしたら気持ちが逆戻りするから。ここに居よう」
「高志さんは寂しくなんか無かったのね・・・今日まで」
「美咲と同じだよ。そんな男に見えるか?」
「だったら・・・美咲の気持ち解っているでしょ?」
「大切なのは今の二人じゃないよ。これからの二人なんだよ。決めたら今から気持ちを切り替えてゆかないといつまでも辛いよ」
「美咲は・・・他の人となんか付き合えない。絶対に・・・」
「俺だって今はそうだよ。美咲より好きになんかなれないよ誰と付き合っても」
「誰かと付き合ってみたいの?」
「そんな事言うなよ。いつかはお互いに誰かと付き合って結婚しないといけないんだよ。辛い気持ちを乗り越えて、そうしないといけないんだよ。美咲、解ってくれ」

「解ってくれ」という事が所詮無理な頼みだった。自分だって解った振りをしているだけに過ぎなかったから。高志は目の前に座っている美咲を直ぐにでも押し倒して自分の欲求を満たしたいと思わないでは無かった。まして二人きりの空間なのだから。

「今日はこれ以上言うのはやめるよ。美咲と話せてよかった。よく見ると横井さんに目元が似ているね。おじさん男前だからきっと大人になったら美咲は美人になるよ」
「高志さん・・・私が他の人と付き合っても平気なの?教えて」
「平気じゃないけど、お互いにそうなってゆくしかないから、我慢するよ。俺は大学卒業するまで誰とも付き合わない。勉強していい会社に入らないといけないからな。美咲だって、いい人と結婚するためにいい学校に行かないとダメだよ」
「私が誰と結婚するって言うのよ・・・高志さんしか考えられないのに」
「またそんなことを言って・・・もっと大きくなったら気持ちが変わってくるって。廻りの男性の見え方が変わるから」
「そんな事無いよ。あなたしか見えないんだから」
「嬉しいけど、変わるんだって、女の子は」
「どうしてそう言えるの?」
「どうしてって・・・大人の人に聞いてごらん」
「逃げるのね、ずるい」
「逃げてなんかいないよ。解る時が来るから・・・」

玄関のドアーが開く音が聞こえた。
「お父さんが帰ってきた」
美咲は玄関に迎えに行った。

「お父さん、お帰りなさい」
「ただいま。高志君来ているんだね」
「うん、さっきから話してた」
「そうか、何の話しに来たのかな」
「お父さんに話すって言ってたよ」
「おれに?お前にじゃなかったのか」
「どちらにも関係することだよ」
「じゃあ聞いてみるか」

「お邪魔しています」高志は横井に頭を下げて挨拶をした。
「いや〜こんにちわ。よく来てくれたね。何の話か聞かせてくれる?」
「はい、お願いに来ました」