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SEAVAN-シーヴァン編【未完】

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「そうだよ。たったそれだけのために俺たちみたいな属性魔法士6人も集めたっての?」
「リムーアってなーんも能力ないグライディリスの奴らと、居残り組の無能なシーヴァニスの集まりだってんだろ?魔法なんて使えないんだろうから俺らいるわけ?」
 一人が何かを言い出せば、次から次へと不満の声があがる。
 森のざわめきは集まった5人の声にかき消され、地面に散った木の葉はシ−ヴァンに詰め寄る者たちによって踏み荒らされた。
「ふざけんなよ?」
 詰め寄る者のうち一人が、シ−ヴァンの胸座をつかみあげた。
 一閃が一瞬を断ち切った。
 はらはらと、男の髪の一房が宙に舞っていた。
 青白い光が地面までの空間に直線的な残像を残し、ゆらりとゆらいでに空気に溶けた。
 辛うじて立っていた男の足から力が欠け落ちて、散った木の葉の上にどすんと尻餅を突く。
 男の足元に青白い燐光を纏った刀が、シ−ヴァンの手によって支えられていた。よくよく目を凝らせば、光とともに細い刀身には青白い文字が浮かび上がっていることに気付いただろうが、男にそれを確めているだけの余裕はない。刀身に浮かび上がっていた青白い光の文字もすぐに消え、刀の表面に再び研ぎ澄まされた鉄の輝きが取り戻される。
 刀身が空を凪ぐ。その音に男がびくついたときには、もう刃は鞘の中に収められていたが。
「これが閣下からの命令だ。お前達が集められた理由は、行けばわかる」
 閣下からの命令。尻餅をついていた男がその台詞を合図にしたように立ち上がって、シ−ヴァンを睨みつけながらも引き下がった。他の者達も同様にしぶしぶと言った様子で周囲に散った。
 それぞれが思い思いの位置に立つのを見渡しシーヴァンは再び言葉を続ける。
「この任務を放棄するようなことがあれば、死をもって償うことになると思え」
 不服はあるかと問えば返ってくるのは否の声。
「で、それが入り口?」
 端の方へと逃げ出した男を目線だけで見送って、イリアがシ−ヴァンの足元を指差した。今ちょうど刀で切り裂いた空間の下。つい先ほどまで下草で覆われていた場所に、ぽっかりと黒い穴が開いていた。
 だが穴と入っても縁は石で土留めがしてあり、明らかに人工物だった。
「先程までは結界に覆われていたから分からなかっただろうが、この穴は城の真下に繋がっている。お前たちにはここを通ってもらう」
 5人が嫌な顔を隠そうともせず、気味悪げに穴の向こうを覗き込んだ。明りがないために何も見えはしないが、何かあれば気配は分かるのだろう。顔を上げた5人からは不満顔は消えないものの、気味の悪さは消えている。
「目標を見つけたならあとは、自分の意思で行動しろ」
「へいへい、じゃいきますか」
 気のない返事をシ−ヴァンに返して一人が動き出せば、それに従って他の者たちが動き出す。
 最後に、先ほどの刃を向けられた男がシ−ヴァンを睨みつけながら、後に続く。
 一人残ったイリアだけが、苦笑を浮かべながらシ−ヴァンに肩を寄せてきた。
「しっかし、いつものことだがお前の行動はひやひやさせてくれるぜ。いくらそのセリヌンが発動してる時は人間斬ることないからってさぁ、あれはやめとけよ」
 そう嘆息しながら指し示すのが、シ−ヴァンの腰刀。
 だが、返ってきた答えはまったくの見当違いなものだった。
「これは魔力を絶つものだからな」
 その台詞にイリアは頭を抱え、逆にシ−ヴァンはイリアの態度が理解できないと首をかしげる。
「まあ、いいや。ところでシーヴァ、一つ聞かせてくれよ」
「くだらない質問なら、受けるつもりはない」
「そう邪険にするなって」
 またおどけた調子で、イリアがシ−ヴァンの肩を叩いた。
 だが、そのあとに続いた言葉は、張り詰めた雰囲気を纏う低い声を伴っていた。
「本当の所、何があるんだリムーアには?俺とお前の仲だろちょっとくらい教えてくれたっていいだろう?」
 肩を組む腕に力をこめるイリアを押しのけ、彼の前にシ−ヴァンは向き直った。
「さっきも言ったはずだ。行けば分かると」
 シ−ヴァンに話すつもりなどないことはあきらかだった。
 あきらめてイリアも潔く穴の中に入ろうと足を向けかけたとき。
 ただ、とシ−ヴァンがイリアを呼び止めた。
「気をつけていけ。お前達でもまだ3 人足りない」
「3 人ってーと全部で9 か…。魔法属性、全部そろうな…」
 うっすらと、イリアのいつもの飄々とした顔に汗がにじむ。
「まさかとは思うけどね。まあとりあえず行ってくるさ」
 イリアが暗い穴の中へと足を向ける。去り際にひらひらと片手を振って、いつもの調子で彼は闇に包まれた穴の中に消えていった。
 
 
 
 再び静けさを取り戻した森の中、イリアの後ろ姿が完全に穴の中に消えてしまうのを見送って、シーヴァンはここから立ち去るために踵を返した。つい先ほど通ってきた道なき道の、踏み分けてきた跡をたどる。
 引き返す道は来る時よりは多少マシにはなっていたが、やはり遠くまでは見通しはきかなかった。森に入ってからそう時間がたっているわけではないが、これでは外の状況がどうなったのか分からない。そろそろどこかの城門が落ちてもいい頃合だが、何の騒ぎも聞こえてこないと言うことはまだなのだろうか。
 あまり早くに城門が開いてしまうと、イリアたちの任務が成功するかどうかが微妙になってくる。が、だからといって、あまり時間をかけすぎるのもよくはない。彼らが何のために城の中に送られたのか、指揮官は知らない。うまくこちらの思惑通りになってくれればいいが。
 そう思いつつ、ちょうど森の出口に差し掛かった時だった。
 木の葉に遮られていた弱い太陽の光が、木々が途切れると同時に直接シーヴァンへと降りかかる強烈な光へと変わった。その眩しさに視界を奪われる中、光の向こうから突然大歓声が沸き起こった。
 ようやく慣れてきた目が、次々と飛び出していく兵士達の群れを捕らえる。
「城門が開いたのか。意外にあの指揮官が有能だったということか」
 だが、これから大軍がなだれ込むと言うことになると、イリアたちの首尾がどうなったかが気がかり。順調に行けば今ごろ城の中に潜入し、目標を確認している頃かもしれないが。
 シーヴァンは行く先を転じた。司令部へ戻るつもりだったところを、東門へと変えた。
 近くの茂みに先に忍ばせておいた、移動用のエアバイクに飛び乗った。足で東門まで行く時間も今は惜しかった。
 エンジンを全開にして東門に向けて飛び出す。
 耳に響くエンジンのうなりと肌を打つ強い風圧。それに耐えつつ、今はもう誰の姿もなく、ただ出撃の際に残された道具やら何やらが辺りに散らばったままの平原を過ぎた。すぐに追いついた兵士たちの間を縫って、最前線へと。
 門に近づくに連れ、喧騒は一層大きくなった。時折その喚声の合間から、まだ落ちない他の城門の破壊に躍起になる爆音や、破壊魔法と封印魔法のぶつかり合う金属音に近い高い音も聞こえてくる。