Over the rainbow
「それは人類が地球に住んでいたころの話ですね。現在の地球はオゾン層が消滅して以来、随分変貌してしまいました」
「そうなんですか?!」
驚いてみせたあと、柚里の美しい眼が陰りを帯びた。
「この星の人たちの気持ちを考慮して重要機密になっていますが、現在の地球はひどい状態になっています。現在、生物は皆無の星になってしまいました。高温と、放射能と、有毒ガスのために全て死滅してしまったのです」
「昔はきれいな蒼い星だったと聞いていますが、今は色も変わってしまったのでしょうか」
「さすが秀才の柚里さんですね。今の地球は良く云えば白い星ですが、褐色の巨大台風が常に幾つも渦巻いていて、恐ろしい姿になっていますよ」
市川は暗い表情で云った。
「もったいないお話ですね。地球にはレアアースとか石油などのほか、貴重な鉱物資源もまだたくさん眠っているそうじゃないですか」
「そうなんですがね、何しろ高温の炭酸ガスや亜硫酸ガスが吹き荒れているんです。人類があの星に戻ることは難しいと思いますよ」
「そんなことになったのも、昔の人間たちが地球の将来を考えずに、工業生産や経済活動ばかりを最優先させ、乱開発をしたからなんですよね」
作品名:Over the rainbow 作家名:マナーモード