Over the rainbow
「みなさん集まってください!」
十九人の研究員たちがすぐに席を立って集まってきた。昨日までここに居た市川のガールフレンドだった岡野友美研究員は、今朝、宇宙探査船に乗って出かけて行った。戻って来るのは三年後である。
「これで全員ですね。それではご紹介します。今日からみなさんの仲間になった奈良井柚里さんです。もうすぐ定時なので、明日からということになりますが、仲良く一緒に仕事してください。よろしいですか?」
十九人の研究員たちは、元気良く返事をした。
「奈良井柚里です。未熟者ですが、どうかご指導の程、よろしくお願いします」
男性十名、女性九名の研究員たちは、笑顔で挨拶を返した。
「今日は五時半から牛尾所長主催の、奈良井さんの歓迎会があります。場所はいつもの居酒屋『時空』です。参加費は無料ですから、できるだけ多くの参加をお願いします」
研究員たちは一人残らず笑顔で拍手をしてから、それぞれの持ち場へ戻って行った。
市川は自分の席の横に椅子を持ってきて、そこに柚里を座らせてから、自分の席に就いた。
「柚里さん。あなたは三光年のかなたに在る、地球を見たことがないでしょう」
市川はやや真剣なまなざしを、美しい乙女に向けた。
「ええ。地球もこの星と同じくらい、きれいな星だったそうですね」
作品名:Over the rainbow 作家名:マナーモード