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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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風琴(おばあちゃんのオルガン)

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 今、おばあちゃんを助けられるのは世界中でわたしだけだって思ったから……。
 部屋にお父さんが入ってきた。
 何故か怒った様な顔をしていたので、わたしは身体を硬くしてお父さんを見上げた。
 でも、お父さんはわたしを手伝ってくれた。
 軽々とオルガンを横に倒して裏側のネジを外したり、黙ったままあちこちを見ていた。

 お父さんは大きな板を外してしばらく中をいじっていたみたいだけど……。
「よし」と言ってわたしの方を向いてうなずいた。
 どうやら直った――みたいだ。
 お父さんは「ペダルとポンプをつなぐ棒が外れていただけだったよ」と言っていたけどわたしには何の事か良く分からなかった。
「弾いてみてごらん」顔はさっきと同じだったけど、怒っているのではないみたい。
 わたしはおそるおそる弾いてみた。
 華やかではないけど、ほんわりと優しい音がした。
 思いつくままに曲を弾いてみると、鍵盤のひとつひとつから一緒に歌ってくれるおばあちゃんの声が聞こえた。
 障子戸の前では部屋を出て行こうとしていたお父さんが背中を向けたまま聞いていてくれた。


 おわり

      03.04.12

 そう言えば『花鳥風月』をタイトルに入れて4作書こう。と思って書いたのがこの2作と、次の『鳥葬』だった。『花』も筋は出来たけど、長くなりすぎて書ききれなかった。
 SSにして書いてみようかと思う。