カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアン・ロッキー(2
14、アイス・フィールド・センター
次の目的地、アイスフィールドセンターに着くまでの間、河原には背丈の低いピンクの花が一面に咲き、道端にはオレンジ色の花が賑やかに咲いていた。
オレンジ色の花は「インディアンペイントブラシ」という。
これは「先住民の絵筆」という意味で、なかなかカタカナの名前を覚えられない私にもすぐに覚えられた花だ。
花の形も名前そのまま絵筆のような形をしているのですぐに分かる。
面白いことにこの花は、咲いている場所の高度によって、花の色が違ってくるらしい。
高い方から、レッド、オレンジ、ピンク、イエロー、白と様々な色の花が咲くらしい。
3200メートル以上がスカーレットペイントブラシ。3000〜2700メートルではレッドペイントブラシ。
アイスフィールドセンターの近くにはオレンジ色が多かったから、この辺りは2700メートルより低いということがわかる。
また、「インディアン」という言葉は現在差別用語とされ、図鑑などでは「インディアンペイントブラシ」ではなく、「スカーレットペイントブラシ」とか「イエローペイントブラシ」とか色の名前で表していた。
しかし、ガイドの山本さんも、現地の人も「インディアンペイントブラシ」と呼んでいた。
インディアンとは呼ばずに『ネイティブアメリカン』とか『ネイティブカナディアン』とか呼ぶようになったらしいが、それに反対している先住民の人もいるようで、難しい問題を抱えているのだろう。
車を走らせていると、途中で、車を降りて、その花を摘んでいる家族がいた。
「あ〜!!国立公園のものはたとえ一輪の花であれ、一個の石であれ、持って帰ってはいけないのに!!」
その家族は堂々と花を摘んでいたのだった。
「あれはいけませんね。いつもはすぐにパトロールの車が来て注意されるのに、今日は来てませんね」
と、悔しそうに山本さんは言った。
暫く走ると、今度は車が縦列で何台か停まっているのが見えた。
中には車から降りている観光客もいる。
「何でしょうね。ちょっと停まってみましょうか。何かいるのかも知れません」
と、山本さんは車を停車させてくれた。
道路沿いの木々を見ていると、
「あ、いました!いましたよ!熊のようですね」
と山本さん。
目を凝らして林の中を見ると、いた!いた!
低い木に登って木の実か若芽を食べているブラックベアーが見えた。
ムシャムシャと無心に食べている。
上手に木登りをしている。木に登っているクマを見るのは初めて。小柄で器用なクマだった。
写真を撮ろうと、車から降りて近づいている人もいる。
「あの人もダメですね〜、危険な野生動物には100メートル以内には近づいてはいけないのに…」
本当にルールを守れない人が多かった。
クマには10メートルくらいまでに近づいていただろうか。
そのうち、お腹がいっぱいになったのか、そのクマは木からスルスルと降りると、こちらのほうは全く無視して、悠然と向こうの林の方に消えていった。
車の中から、パチパチとそのクマ君を写そうとしたが、ボヤけてしまってうまく写せなかったのが残念だった。
カナディアンロッキーに来て、間近で野生動物を見たのはこの時が初めてだった。顔ははっきり見えず、去っていく後姿だけだったが、それでも出会えたことが嬉しかった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアン・ロッキー(2 作家名:ねむり姫