カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアン・ロッキー(2
「ここでは、野生動物によく出会いますよ」
「出会わないほうが少ないんですよ。今までに、クマや角が平べったいムースやビッグホーンシープも見ましたね」
「やはり、雪が融けて餌を探しに出てくるんでしょうね。春に出会うことが多いですね。集団で道路に居るときもあるし…」
そんな話を聞くとますます早く会いたくなる。
車についたマイクを通して、そういうことを聞いているうちに、最初の観光ポイントのアサバスカ滝に着いた。
車から降りて見上げる空は快晴。
青く澄み渡った空に針葉樹の葉先が突き刺さる。
流れる川には砂地の河原はなく、すぐそばに背の高い木々が生えている。
その両岸の間を広くゆったりと流れてきたアサバスカ川の水が、ここに来て急に狭まり、ドドドーンと滝つぼに落ちる。
広い川の水が一気に集まるものだから、その水量は凄まじく、その落ちる響きはゴーゴーと唸り、話し声も消されるほどの轟音だった。
展望台は滝にとても近く、そこから眺めるアサバスカ滝の迫力は今までに日本で見てきた滝とは比べものにならにほど凄かった。
滝から飛び散るしぶきが顔に掛かる。
「あ、お姉ちゃん、見て!虹が出てる!!」
そのしぶきに太陽光が当たり、小さな虹を描く。赤・黄・青がはっきりと見える。
「わあ〜、ホンマや!綺麗やねえ〜」
朝の清々しい空気に相応しい光景だった。
落差22メートルの滝つぼにドクドクと流れ落ちる水を上から見ると、体ごと吸い込まれていくようだった。
また少し遠目の展望台から見てみると、滝つぼに落ちたしぶきが舞い上がって薄い雲のようにも見える。
滝つぼに落ちた水が行き場を失って、また舞い上がりうねりのようになって下流に流れていく。
その流れる方向と並行して、少し離れた所に、岩と岩の間を降りていく階段あった。
どこまで続くのだろうかと下りてみたが、岩と岩の狭い間を通るものだから、ゴーゴーと鳴り響く滝の音とも相まって、押しつぶされそうな恐怖を感じた。
ここも昔は川だったらしい。滝からの続きで流れ落ちていたのだろう。細い細い、深い川がいくつかに分かれてまた合流すると、広いアサバスカ川となる。
この滝の両側の岩は、ミルフィーユかパイの皮を積み重ねたような薄い層が幾重にも重なっている。それも褶曲はしておらず、平らに積み重なっていた。
それが何とも不思議だった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアン・ロッキー(2 作家名:ねむり姫