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カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアン・ロッキー(2

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21、トランス・カナダ・ハイウェイ



さて、レイクルイーズを最後にカナディアンロッキーの観光も終わり、一路、今日の宿泊地バンフへと向かった。
バンフまでの1時間は両側の景色はそれまでと劣らず、素晴らしい景色の連続だった。

まず、テンプル山が見えてきた。標高3543メートルもあると言う。その頂上にはマクドナルド氷河という氷河が帽子のように被さっている。
世界各地の氷河が地球温暖化の影響で次々と後退している中で、この氷河だけは成長しているという珍しい氷河だそうだ。
マクドナルドとはカナダの初代首相の名前で、レイクルイーズもビクトリア女王の王女・カナダ総督婦人のルイーズ王女から名づけるなど、カナダの名所には、関連ある人物の名前をつけているのも面白い。

テンプル山の次に見えてきたのは、キャッスルマウンテン、2766メートル。
名前の通りの姿かたちから名前は一度聞いただけで覚えてしまった。
天空に向かってヨーロッパの古城がそびえてるような山だった。

森林限界線より上は、ほぼ垂直に切り立った絶壁で、そこに見える地層は水平に何重にも積み重なっている。頂上もほぼ水平だけれども、地層の弱いところは侵食されギザギザになっていて、一部お城の塔のようにそびえ立っていた。
この山の岩は5億4000万年前から5億2000万年前の岩だということだから、ビックリである。
とても人を寄せ付けないように見えるこの山も、裏側はなだらかにカーブしていて、登山コースもあり比較的登りやすい山なんだそうだ。

さて、バンフに向かうトランス・カナダ゙・ハイウェイを快適に走っていると、珍しく渋滞に出遭ってしまった。
ここは4車線の新しい道路なのに…。
「今まで渋滞なんかなかったんですけどねぇ…」
と山本さんも不思議そうに話す。

レイク・ルイーズまでのアイス・フィールド・パークウェイでは、対向してくる車もほとんどなく、ホントに快適なドライブだった。
このときは、時刻も午後4時を過ぎ、多くの人が宿にしているバンフの町も近いというだけあって、車も多くなってきているのだろうか。
渋滞原因は道路工事のためだと工事の場所にきてやっとわかった。

ゆっくり走りながら、この道路のことを話してくれた。
走っていると、めがね橋のような短いトンネルが見えてきた。それを「アニマル・オーバー・パス」という。トンネルじゃなくて橋なのだそうだ。
橋の上はコンクリートではなく、草や木も生えている。そこを動物が通れるように動物専用の橋になっていた。

どうしてそんな橋を作ったのだろうか…

その橋を作ったのは4車線になってから、横断中の動物の交通事故が増えてきたからだそうだ。そこで、道路の横に柵を作って動物が道路を横断できないようにした。でも、それだけだと生態系が崩れていく。
そこで、橋を作ってその上を通れるようにし、道路の左右の森を自由の行き来できるようにと考えて橋にしたということだ。
でもかなりのお金がかかる。一つにつき2億円ぐらいかかるので「アニマル・オーバー・パス」はまだ二つしかできていない。

その橋を作る前に、先に「アニマル・アンダー・パス」というトンネルを道路の下に作ってそこを通そうとした。
でも、熊や鹿や狼は警戒心が強いので、そこは全く通らなかった。道路の下のトンネルは22箇所ほどあるようだが、動物が通らないと意味がないので、さらに上を通る橋を作ったという。
何億円ものお金を出して野生動物を守ろうとするカナダの姿勢は素晴らしい。

しかし、何十キロもある中で二箇所しかない動物専用の橋が動物にはわかるのだろうか…、ちょっと疑問だけれど全くないよりはマシだろうな。
アニマル・オーバー・パスができてからまだ、数年のようなので、もう少し経てばいろんな動物たちにも知れ渡って利用してくれるかもしれない。
それに期待したいなぁ。

この「アニマル・オーバー・パス」の話を聞いて、ボルネオのオランウータンのことを思い出した。
NPOの「ボルネオ保全トラスト」が実施している「つり橋プロジェクト」を。
パーム油をとるためにどんどんと作られてしまったアブラヤシのプランテーション。そのために、あんなに広大だった熱帯雨林がどんどんと消滅し、今では川沿いの狭いところに点在しているだけになってしまった。
その狭い場所に絶滅寸前になってしまったオランウータンがおいこめられて住んでいる。
オランウータンは水が怖くて泳げないので、対岸のジャングルには行けず、新しい出会いもなく、繁殖もできなくなってしまう。
その危機を避けるために、木から木への移動の代わりに、つり橋を作ろうというプロジェクトなのだ。

そのつり橋の材料に、何と廃棄処分になった日本の消防用ホースを使ってるのだ。
しかし、あくまでもNPO主導。大量にパーム油を消費している日本政府のプロジェクトではなく企業や個人が出資して作っているものだ。

孤立した場所と場所をつないで生態系を守ろうというのは同じ考えでも、政府の仕事ではないところがカナダとは大きく違うと。
ボルネオのパーム油のおかげで利益を上げている企業がもっと環境のこと考えないと地球環境はどんどん悪化してしまう。

「アニマル・オーバー・パス」のことを聞いて、そんなことを考えながらも、車の中でウトウトしてしまった。


それでも山本さんは、途切れることなく案内を続けてくれていた。
どこか遠くの耳で聞きながら、こういうガイドも大変な仕事だなあ、ちゃんと聞かなくっちゃ…。
でも、睡魔には勝てないzzzzz……ごめんなさい。
いつの間にか眠ってしまったようだった。