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二郎

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「アホか! 昼間っからビール飲んで、俺の株で勝手に戯(たわむ)れるな! これぞ世に言う業務不履行で、不埒(ふらち)窮まる行いだ。……、出て行け!」
 高見沢は怒り心頭。

 一方ふわふわ二郎は、分身の一郎から思い切り怒鳴られて、しおらしく落ち込んでしまったようだ。涙ぐんでいるのか、球体の表面をうっすらと濡らしている。その上に、突然球体の真ん中にスパッと割れ目を入れてくるのだ。

「おいおいおい、二郎、切腹してどうするんだよ。まあ落ち着け、その腹を元に戻せ!」
 高見沢はそう叫ばざるを得なかった。そして、「もういいよ、持ってても損、売っても損、そんな株だ、気にするな」と優しくなだめにかからざるを得なかった。

 しかし、二郎は土下座までして謝ってくる。まるで「この不始末、男としてきっちりと責任取らさせてもらいます」と陳謝してきているようでもある。

 そしてその後に、二郎は高見沢の「出て行け」の命に従い、音もなくどこかへ消えて行ってしまったのだ。


作品名:二郎 作家名:鮎風 遊