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二郎

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 高見沢一郎とふわふわ野郎の二郎、こんな一人と一匹の小さなアパートでの共同生活、さらに三ヶ月の月日が流れた。高見沢は相変わらず仕事に追われている。

 一方二郎と言えば、より知恵が付いてきたのか、テレビを観たりインターネットをしたりのお気楽生活。そのせいか部屋は散らかり放題。高見沢は、毎朝出勤前に「片付けておけ」と二郎に指示をして出ていく。

 確かに最初の頃は、二郎は殊勝に「はいはい」と整理整頓に励んでいた。しかし、最近は随分と生意気になってきたのか、高見沢が指示を飛ばしておいてもサボッている。

 そんなある日、高見沢は風邪気味で早目に仕事を切り上げて戻ってきた。ドアーを開け部屋へと入ってみると、相変わらず散らかったまま。そして二郎と言えば、パソコンの前でふわりふわりと浮かんで、ビールを呷(あお)りながらインターネットをやって遊んでいる。

「こら、二郎、掃除もしないでビール飲んで、何やってんだ!」
 高見沢はまずはきつく叱り飛ばした。そして二郎が見入っている画面を覗いてみた。どうも二郎は、高見沢のネット証券口座に侵入し、勝手に株の売買をしているようだ。

 高見沢の虎の子の優良銘柄、まず百万円の損切りをし、そして、こともあろうか、ボロ株に買い注文を出しているのだ。


作品名:二郎 作家名:鮎風 遊