二郎
「なんでなんだよ!」
高見沢は思わず絶叫。こんなふわふわ野郎が分身だとは許せない。しかしその反面、「なるほど、それで俺と同じようにビールが好きなのか。まあ世の中、こういう間柄もあるのかなあ」と少し合点もする。
だが、こんなやりとりに高見沢は疲れてしまった。そして、「おい二郎、もう寝るぞ」と告げ、ベッドに潜り込んだ。
冷やっとしたシーツの感触が身体全体に伝わってくる。多分アパートの外は、街灯で淡い光の世界が広がっていることだろう。しかし今、高見沢の瞼の中に見えるものは何もない。そんな静寂(しじま)の中へとゆっくりと埋没していく。
そして二郎は、いつの間にか高見沢の冷えた頬の辺りに、いかにもまん丸くなって、そっと寄り添ってきているのだった。