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キツネ目をつかまえろ

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 そして、つのる空腹感が更に彼女を想い出させた。胸の辺りに微かな疼きを覚える。「寂しい夕暮れどきに、お腹がすいたら我慢しないで、食事をしてくださいね」そんなミニメールがわざわざ送られて来た。そのとき、早川は図らずも泣いてしまいそうになった。心に染みた。そんなありきたりのことばに、女性らしい優しさを痛切に感じた。この人は大事にしたいと思った。
 あれから随分時が経っている。もはや、既にマイフレンドでさえない。だからもう、縁もゆかりもない人間なのだと、思い直した。
 宝くじ売り場が半ば消失した。早川は既に箱になってしまった売り場の横に戻った。
 そのとき、彼の視野の端から、凶器のような物を持つ長身の若い男が、唐突に接近して来たような気がした。早川は咄嗟に無差別殺人の犯人が突如現れた場面を想像して重ね合わせた。
 襲撃されるかも知れないという危機意識、恐怖と戦慄が、早川の全身に走った。鼓動が即座に、激しく速く脈打ち始めている。
 友人の元プロレスラー、佐武太朗を思い出す。肝心なとき、彼は近くに居ない。彼は生憎、国外に出ていた。佐武はテニスサークルで知り合った女性と、今年二月に結婚する予定だったが、それが延期されて六月末になった。彼と新妻が新婚旅行を終えて戻るのは、明後日の今頃だと聞いた。