キツネ目をつかまえろ
二人掛かりで示談交渉へ導いて示談金を乗務員からその場で詐取するのである。犯人の片割れの写真が、会社の掲示板にあった。キツネ目の、金髪の若い男だった。生活破壊が、ひいては人格破壊をも引き起こしている。
十八時五十分。駅前に戻って来た。雨はいつの間にか、やんでいた。人通りは依然絶えない。宝くじの売り場の販売員は、店じまいの準備に忙しい。早川は声をかけようと思ったがやめた。
バカな国会議員たちの気の迷いにより、宝くじの販売が中止にならなくて良かったと、そう、云おうとしたものの、仕事の邪魔をしてはいけないと思い直した。小屋のような体裁だった売り場は、手際よくどんどんたたまれ、何本もの紐で縛られて手品のように、見事にひとつの箱になってしまった。大誤算だった。
中年女性の販売員が 胡散臭そうに早川の様子を窺っている気配なので、彼は十メートル程駅の建物側へ移動した。
早川はコンビニの全面ガラスに、気になるポスターを発見した。両替サービスを開始したという内容だ。タクシーの乗務員である早川にとって、これは朗報と云える。
一万円札で料金を支払われることが、立て続けに三回などということも、月末前後にはあるのだった。同じことを苦にしていたポニーさんに報らせたいと思った。
作品名:キツネ目をつかまえろ 作家名:マナーモード