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キツネ目をつかまえろ

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 突然、声をかけられた。
「こんばんは。コクトーさんですか?……ゆうきと申します。解りますよね」
明るい色のカジュアル系の服装の若い男は、云ってからにこっと笑った。右手に持っていたのは凶器ではなく、ただの折りたたみ傘だった。
ほっとした。二人とも同じような服装だと思いながら、早川もつられて笑顔になった。
「……ユッキーさんですね。よくここが判りましたね」
「交番で確認しました」
 本名を訊いてみると、結ぶという字と城で、結城という姓であることが判明した。
 会釈した男は、四十前の早川よりは随分若い。身長は百八十センチ以上だろう。それだけは早川と共通だった。育ちの良さを、その爽やかな風貌は主張している。女性ではなかったことに、早川は半ば落胆し、半ば安堵もしていた。
「コクトーさんは?」
「早川です。川は三本川ですから、一番ポピユラーな早川です。よろしくお願いします」
 そう云って頭を下げた。
「あ、どうも。笑われそうですが、今日は品川まで新幹線で戻って来ました」
「また宝塚へ行って来たんですか!正直に云って、女性だと思ってましたよ」
「宝塚ファンだということは、サイトの中だけで公表しています……早川さん、ハンサムですね……大丈夫です。そんな趣味はありませんから」