キツネ目をつかまえろ
結城が追いつき、逃げようとする犯人を思い切り殴った。
キツネ目の男は動かない。失神したらしい。
早川はそれでも夢中で犯人の両足を押さえた。
結城はうつ伏せにした犯人の両手を、ザイルで手早く縛り上げた。
二人の制服の警察官が駆けて来たのは、その直後だった。
「御苦労さまです。怪我はありませんか?」
犯人逮捕に貢献したカラオケボックスの青年が、自転車と共に倒れている。
「一名負傷しました、救急車をこちらにお願いします」
結城は犯人を引き渡すと青年の元に動いた。
「大丈夫ですか?」
「はい。逮捕できましたね」
そう云ったカラオケボックスの青年の、膝や肘などは少し出血しているが、その目は輝いていた。
「無理に動かないでください」
「そうですね、たいしたことないですが」
「道が狭いから、救急車は反対側から来るでしょう。ありがとうございました」
結城は振り向いて若い警察官に訊いた。
「もう一人の犯人は?」
「確保しました」
作品名:キツネ目をつかまえろ 作家名:マナーモード