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キツネ目をつかまえろ

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「そうだった。忘れてました。それで二の十五だと……」
 漸く扉が開いた。駆け込んだ結城は叩くようにボタンを押した。
「五階からよく発見してくれましたね。姉はたったひとりの肉親なんです」
「心配ですね。犯人は刃物を持っているかも知れません。でも、警察を呼んだから、多分大丈夫ですよ」
 エレベーターが一階で停止した。扉が開くと、二人は走り出して玄関へ向かう。
 ガラス扉の外は、明るくなり始めていた。住宅地の朝の空気の中を、二人は走った。
 後方から自転車が走って来る。カラオケボックスの、あの青年だった。また、偶然の連鎖だ。
「どうしたんですか?!」
「金髪の悪党を捕まえに行くところだ!」
「その金髪は泥棒?」
 青年は走る二人のあとについて来る。
 早川が応えた。
「当たり屋だよ!タクシーから金を巻き上げる悪党だ!」
 左折して右折する。もう一度右折すると極端に狭い道になった。
 前方にタクシーとパトロールカーと、救急車のものらしい派手な光が見える。
 自転車が加速して先に行き、一人で走って来る金髪の男と衝突した。
 二人の男と、自転車が音をたてて倒れた。