キツネ目をつかまえろ
コミック中心の書籍と、ゲームソフトのリサイクルショップに入った。何もかも格安である。コミックの立ち読みをする二十歳前後らしい若者たちの姿が目立っている。もはや日本が世界に誇れるものは、「manga」だけになりつつあるのかも知れない。しかし、かつて漫画少年だった早川も、最近のものには馴染めなくなっていた。
少女漫画を立ち読みしている一人の女性に、早川は疑念を抱いた。半透明の薄い生地の蒼いミニスカート。その下に長くてまあまあの生足。その女性はベージュ色のサマーセーターを、腰に巻いていた。
以前、乗車したときは男だったのに、降りるときは女性になっていたタクシーの乗客を想い出す。車内で着替えたことは、きぬずれの音で判った。ミラーでは確認できなかった。乗客と視線が合わないように、角度を調整していた。
混雑のために、奥の旧いゲームソフトのコーナーに進むのに苦労した。背の高い棚には、まだそれほど旧くないゲームソフトが沢山並んでいる。
中古テレビゲームの本体価格が、新品の三倍に近い。最新のソフトを売るために、テレビゲームの本体が叩き売り的に値下げされたため、そんな珍現象が起きている。開発に巨額を投じたそのソフトに、社運がかかっているのだという。
作品名:キツネ目をつかまえろ 作家名:マナーモード