キツネ目をつかまえろ
彼はこのところ、親しい「マイフレンド」を求めていた。マイフレンドというのは、彼が数年前から会員になっているパソコンサイトの中での話だ。気の合う者同士が合意すれば、半ば定期的に連絡を取り合う間柄にもなれる。最新の「日記」は互いの「マイページ」に表示されるので、読み落とすことが少ないようにも配慮されていた。他の会員に内容を知られることのない「ミニメール」で連絡を取り合えば、親しさを増すことにもなる。
正月過ぎまでは、「ポニーさん」というハンドルネームで、今年三十二歳の女性の同業者と連絡し合っていたのだが、何の前触れもなく突然マイフレンドを解除されてしまった。彼女が「日記」も書かなくなってしまったのは、「カレシ」ができたからかも知れない。それはいい。恋愛が必ずしも人を幸福にするとは限らないにしても、恋愛のない人生よりは、あったほうが良いに決まっている。
早川は、彼女の幸福を願っていた。
「価格破壊ショップ」という名の衣料品の店の前に、段ボール箱が並んでいる。「ソックス五足三百九十円」と蛍光塗料の朱文字。中国製だろうか。国産では間違いなく赤字だろう。日本が弱いのは、スポーツだけではなくなった。
正月過ぎまでは、「ポニーさん」というハンドルネームで、今年三十二歳の女性の同業者と連絡し合っていたのだが、何の前触れもなく突然マイフレンドを解除されてしまった。彼女が「日記」も書かなくなってしまったのは、「カレシ」ができたからかも知れない。それはいい。恋愛が必ずしも人を幸福にするとは限らないにしても、恋愛のない人生よりは、あったほうが良いに決まっている。
早川は、彼女の幸福を願っていた。
「価格破壊ショップ」という名の衣料品の店の前に、段ボール箱が並んでいる。「ソックス五足三百九十円」と蛍光塗料の朱文字。中国製だろうか。国産では間違いなく赤字だろう。日本が弱いのは、スポーツだけではなくなった。
作品名:キツネ目をつかまえろ 作家名:マナーモード