キツネ目をつかまえろ
早川は起き上った。ひどく驚いたポニーテールの若い女は、二歩もあとじ去った。
「と、いうことは、あなたは雪奈さんじゃないということですか?」
早川は夢を見ていたらしいのだが、まだ夢が続いているような気もしている。そこに居る女性はよく見ると雪奈という女性程美人ではないのだが、何か惹かれるものを彼は感じた。
「そんなひと知りません」
早川は首をまわして幸洋を探したが、彼は居ない。早川と女が居る部屋は、十五畳大のフローリングのリビングである。サイドボードの上に、三毛猫が寝ている。
「……あなたは、幸洋さんのお姉さん?」
ポニーテールの女は紺色の制服のようなものを着ている。
「……姉ですよ。あなたは幸洋のお友達ですか?」
「はい。最近知り合った早川です。そちらのお名前は?」
「わたしは智織です。結城智織」
「あれっ。姉さん。久しぶりだね。何の用?」
突然、寝ぼけまなこの幸洋が現れた。
「誰なのこの人。あなたの友達にこんな人居た?」
早川は立ち上がり、
「こんな人ですが、マイフレンドのコクトーです」
「ごめんなさい……えっ?!マイフレンド?……もしかして、パソコンサイト?」
最も慌てたのは幸洋かも知れない。
作品名:キツネ目をつかまえろ 作家名:マナーモード