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キツネ目をつかまえろ

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奇妙な夢


 早川は女優だった麗奈によく似た美女と並んで川のほとりの遊歩道を、ゆっくりと歩いている。カラオケボックスから出ると、駅とは反対側へ歩き出したのだった。
昨日朝の集中豪雨の余韻で、川の流れは、すさまじい。
「わたしは男装していたの。驚いたでしょう」
その声は若い娘のもの意外の何ものでもない。だが、それでいて長い人生を送って来た女の、落ち着きをも連想させる。
「驚きました。あの歌声もよかったけど、本当の声も気に入りました」
「うふふ。あの歌は弟が歌ったのを録音して、それに合わせて、口パクだったの」
「弟さん?それで、その意図は?」
「あの恰好で女の声じゃまずいでしょ。信じられますか?わたし、宝塚の雪組に属しているの」
「と、いうことは、あなたも鉄道会社の社員というわけですね?」
「あははは。そうなの。出発、進行!」
雪奈は右手のひとさし指を顔の横で立ててから、それを前方へ倒した。二人で声を合わせて笑った。
「ところで、あなたがほんもののユッキーさんなんですね?」
「そうです。よろしくお願いしますね。雪だるまの雪と、奈良漬けの奈で、雪奈と申します」