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てっしゅう
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「神のいたずら」 第四章 両親と優

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「車出すわよ。シートベルト着けた?」
「はい」
「優の生徒さんだったのね・・・こんなことって起こるのね。そうそう、帰り遅くなってお母様ご心配されているでしょうから、家に着いたら電話して頂戴ね」
「はい・・・でも男の子と喧嘩したことは内緒にしてください・・・心配しますから」
「そうね、でも良くあんな男子に食って掛かったわね。どこかへ連れてゆかれたら、大変な目に合わされたかも知れなかったのよ。これからは気をつけてね。大切な身体なんだから」
「すみません・・・ガキって言われて、腹が立ったものですから」
「そんなことで・・・我慢しなきゃいけませんよ。今の人はちょっとしたことで直ぐに切れて、とんでもないことをやらかすから」
「気をつけます・・・よく考えたら、怖い事したなあって、思います」

車は自宅に着いた。

碧は玄関の扉を開けるとそこに立っていた優と目が合った。
「碧ちゃん!どうしたの?」
母親の美江子は事情を説明した。

「私がシップしてあげるから、中に上がって・・・」そう言って、碧の身体を支えながら居間に連れて行った。
「先生、ゴメンなさいこんなことしてしまって」
「いいのよ、いまさら言っても仕方ないことだけど、もう絶対に男の人に変な事言っちゃだめよ、先生と約束して!」
「はい、約束します」

シップ薬を張ってもらって少しすっとした気持ちになった。それほど酷く捻挫してなかったので痛みは軽くなってきた。美江子が差し出した電話機で家に電話した。

「ママ・・・遅くなってゴメン。今、前島先生の自宅に来ているの」
「先生のところに寄るなんていってなかったじゃないの?どうしたの」
「うん、偶然会ったから・・・ちょっと待って代わるから」

「前島です。近くで出会ったものですからお連れしましたの。こちらから送らせて頂きますのでご安心して下さい」優は捻挫のことは言わなかった。
「そんな事、ご迷惑ですわ。帰れますから、駅までで結構ですのよ、送っていただけるのでしたら」
「ついでですから・・・では3時か4時ぐらいまでにはお返ししますので」

昼ごはんも食べて、碧は優と二人で話していた。
「部屋に来る?その方が話しやすいでしょ?」優は碧にそう聞いた。
「うん、いいの?」
「どうぞ・・・二階だから、階段大丈夫かな?」
「もうあんまり痛くないよ。ゆっくりなら上がれる」

部屋に入ってベッドに腰掛けて枕元にあった写真を見た。優と一緒に隼人が写っていた。碧は手にとって眺めていた。

「その人が隼人さんなの」
碧は、いや隼人は久しぶりに自分が写っている姿を見た。こんな姿だったんだ、と改めて感慨深く感じた。
「先生は今でも忘れられないの?」
「そうよ、そんなに簡単に忘れられない。辛いって思うけど、もう少し時間がかかりそう・・・碧ちゃんは好きな人がいるの?」

優の顔をじっと見た・・・そして目線を落として、
「いるよ・・・」そう返事した。

「そう、いるの・・・誰なのか聞いてもいい?」
「みんな知ってるよ。達也君」
「クラスの?戸田君のこと?」
「うん、体操部でも一緒だし・・・」
「どうやって仲良くなったの?」
「どうやってって・・・最初の日にクラスの男子に髪の色や目の色のことでからかわれているところを助けてくれたの。それから話すようになって、私から好きって言った」
「そうだったの。そういえば碧ちゃんは自然に茶色い髪の毛なんだね・・・なんだか羨ましい。先生なんか毎月染めているから。戸田君は背も高いし、スポーツマンだし、成績もいいから、お似合いよ」
「本当にそう思う?似合ってるって?」
「だって、碧ちゃんは学年一番の成績だし、なんと言っても美人よ。先生お世辞じゃなくそう思うの。きっと大きくなったら素敵な女の子になるって、保証するわ」
「わ〜い、嬉しい!先生みたいに綺麗になるっていうことなの?」
「まあ!お返ししてくれたのね・・・ませているのね、碧ちゃんって」
「ううん、先生は本当に綺麗だよ。笑顔がとっても素敵。いつも笑っていたほうが似合うよ」
「そうね、よくそう言われるの・・・笑顔にしてなさいって。碧ちゃんはいつも笑顔よね?それに負けず嫌い。先生なんか、いつも臆病で過去を引きずってしまう・・・」
「ねえ?先生にお願いがあるの、聞いてくれる?」
「うん、何?」
「夏休みに入って直ぐに、達也君と遠くまで遊びに行きたいの。大阪とか神戸とか・・・二人では行けないから、先生に連れて行って欲しいなあって考えたんだけど無理?」
「達也君と二人で?もうそんな付き合いしているの?」
「誤解しないで。彼夏休み過ぎから塾に通うらしいからもうゆっくり合えなくなるの。その前に出かけたいと思ったの。私も達也君も先生と一緒なら親が許すって思ったから・・・」

優は大変な相談をされたと困惑した。特別な理由でもない限り生徒と個人的に出かけることは一般的ではないからだ。碧と二人なら理由を見つけることが出来る。高橋の家に行くといえば共通の目的が示せる。

「ねえ?碧ちゃんと二人だったら、行っても構わないけど、戸田君と一緒は無理なの・・・先生に連れてゆく理由がないから。解るかしら?」
「うん、解るよ・・・そうなの」

思惑が外れた気がしたが、優と二人で旅行もいいと思い始めた。

優の運転で自宅まで送ってもらった。母親の由紀恵は丁寧に礼を言って見送った。

「綺麗な先生ね・・・碧もあんなふうになれるといいのにね」
「先生がね、碧も綺麗になるって言ってくれたよ」
「そう・・・じゃあなれるわよ。ママも期待しちゃお」

少し左足をかばいながら歩いているのを見つけて由紀恵は聞いた。
「碧、足が痛いんじゃないの?大丈夫?」
「ちょっとひねったの。先生の家でシップしてもらったから今はそれほど痛くないよ」
「ならいいけど。お礼を言っておかないといけないわね。後で電話するからいいわね?」
「しなくていいよ。そう言ってくれたから」
「そういうものじゃないのよ、親としては」

自分の部屋に入って優と一緒に旅行することを考えていた。もし出来るなら泊まりで行きたいと思った。そうだ、自分から高橋に電話して、遊びに行きたいって言えばきっと良くしてくれるかも知れないと考えた。優と一緒に行くといえば必ず歓迎してくれるだろうから泊まることも可能だと思えたのだ。

夜になって、高橋の家に電話をした。先日のお礼と、手紙を渡したことも伝えた。優が会いたいと伝えると、一緒にこちらに来てくださいと言われた。しめたと碧は思った。学校に行って、優にこのことを伝えると、「ご両親の許可が出たら一緒に行きましょう」と優から返事をもらえた。

部活の帰り達也に碧は謝った。
「ゴメンね。一緒に行けなくなった。頼んだ先生がダメだって言ったから」
「いいんだよ、俺は行けなくてもいつでも学校で会えるんだし」
「うん、塾に行くようになっても話は毎日しようね」
「そうするよ。碧を他に取られたくないからな」
「心配してくれるのね・・・嬉しい」

家に帰ってきて、夕飯のときに母と父に相談した。
「夏休みに前島先生と名古屋に行きたいの。高橋さんのところなんだけど、先生が一緒に行きましょうって言ってくれたから。ねえいいでしょ?」