月光の仮面
これから私達もその裏側を少しずつ見せ合って生きて行くのだろう。
みゆきの目にはそれがどう映るのだろうか……。
愛すべき男でいられるのだろうか?
想像以上につまらない人間?
もしかすると既に全てを見られているのかもしれない。
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私はしっかりとカーテンを閉じた。
これ以上月の光を浴びるのは危険だ。
全身に受けなくても目から入った月光は全身に行き渡り、私の中に眠る狼の遺伝子を呼び覚ましてしまう。
急激なメタモルフォーゼは著しい消耗を招く。空腹は時に理性を捻じ伏せ、愛する者さえ食い殺してしまう事が有るのだ。
それだってほんの一塊の生肉を用意しておけば、怖れるほどの事でも無い……。
元々群れを作って暮らす狼は、餓えたとしても健康な仲間を襲う事は無い。
私の一族を狂気に走らせるのはむしろ、人間の遺伝子に違いない……。
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私は抱きしめた腕に少しだけ力を入れた。
ガラスの向こうで聞こえる筈の無い風の音が聞こえていた――。
おわり
03.03.23
№025