月光の仮面
<月光の仮面>
初めてみゆきと身体を重ねた夜――。
浅い眠りから覚めた私は窓辺に立ってカーテンを細目に開けた。
厚手の布とガラスとの間に溜まった冷たい空気が足下に落ちてくる。
高層ホテルの窓から街を見下ろすと、他人同士であるはずの車のヘッドライトが行儀良く並んでノロノロと動いているのが奇妙だった。
そして、見上げると天空には青白く輝く満月が太古の昔より変わらぬ貌で私のみそか事を見つめていた……。
「よぉ」私は月に軽く挨拶した。
いつの間にかみゆきが起きて来て、私に寄り添う。
右腕を包み込む素肌の感触ごと薄手のブランケットが巻き付いて来た。
みゆきは狭いカーテンの隙間を覗き込む。
私が何を見ていたのか、確かめようとしている様だ……。
「ねぇ、何を見ていたの?」
私を見上げる黒い瞳が月の光を映していた。
「月さ。月なんて久しぶりに見た気がするよ」
私は空いている方の腕でみゆきを、巻き付けた毛布ごと抱き寄せた。
「ねぇ子供の頃、月にはうさぎが居るって……信じてた?」
みゆきの顔が覗き込むように近づく。
私は答えず唇を合わせた。応えはむしろこれで良かったようだ。
「月の模様って、餅を突いていたり、振り返っていたり、同じうさぎでも見方は一つじゃ無いんだよ」
初めてみゆきと身体を重ねた夜――。
浅い眠りから覚めた私は窓辺に立ってカーテンを細目に開けた。
厚手の布とガラスとの間に溜まった冷たい空気が足下に落ちてくる。
高層ホテルの窓から街を見下ろすと、他人同士であるはずの車のヘッドライトが行儀良く並んでノロノロと動いているのが奇妙だった。
そして、見上げると天空には青白く輝く満月が太古の昔より変わらぬ貌で私のみそか事を見つめていた……。
「よぉ」私は月に軽く挨拶した。
いつの間にかみゆきが起きて来て、私に寄り添う。
右腕を包み込む素肌の感触ごと薄手のブランケットが巻き付いて来た。
みゆきは狭いカーテンの隙間を覗き込む。
私が何を見ていたのか、確かめようとしている様だ……。
「ねぇ、何を見ていたの?」
私を見上げる黒い瞳が月の光を映していた。
「月さ。月なんて久しぶりに見た気がするよ」
私は空いている方の腕でみゆきを、巻き付けた毛布ごと抱き寄せた。
「ねぇ子供の頃、月にはうさぎが居るって……信じてた?」
みゆきの顔が覗き込むように近づく。
私は答えず唇を合わせた。応えはむしろこれで良かったようだ。
「月の模様って、餅を突いていたり、振り返っていたり、同じうさぎでも見方は一つじゃ無いんだよ」