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茶房 クロッカス その2

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 今日もいつものように午後をのんびり過ごしていると、カラ~ン コロ~ンと音がしてドアが開いた。
 見るとあの子だ。
「いらっしゃい、今日はどうしたんだぃ? こんな時間に……仕事は?」
「私のこと、忘れないでいてくれたんですね、悟郎さん」
「もちろんだよ! こんな可愛い子を忘れるわけないじゃないか」
 俺はすばやく思考を巡らし、
「えっとー、京子ちゃんだったよね?」
 そう言いながら京子ちゃんの顔を見ると、突然大粒の涙がポロリ……。
「おぉ!? どうしたんだよぅ一体、誰かにいじめられたのかぃ?」
 小さな子供でもないのに、焦った俺はそんなアホなことを言ってしまった。
「あぁ…そうじゃなくて…えっとーー」
 益々焦る。
「悟郎さんいいの。ごめんなさい、びっくりさせて……」
 鼻をすすり上げながら京子ちゃんはそう言って、気持ちを落ち着かせようと大きく深呼吸をした。
「まぁともかくここに座って」
 京子ちゃんがカウンター席に座るのを見届けてから、
「紅茶でいいかぃ?」と、そっと声を掛けた。
 京子ちゃんは何も言わず、ただ軽く頷くだけだった。
 紅茶をカウンターにそっと出すと、俺はじっと京子ちゃんが話し始めるのを待った。
 こういう時は、本人の気持ちに任せた方がいいと、俺は経験で知っているから。

 ――しばらくして、
「悟郎さんあのね……」
 そこまで言うと鼻をグスンとすすって、
「――実は、彼から連絡がないの。手紙にもメールにも……電話にも出てくれないし……私、忘れられちゃったのかなぁ~。悟郎さん、私、不安で不安で……どうしたらいいの?」
「うーん……そうなのかぁー」 
 潤んだ瞳で見つめられても、俺は唸るしかなかった。

 しばらく二人とも黙り込み、京子ちゃんは思い出したように紅茶を口に含んだ。
「京子ちゃん、俺の若い時の話を聞いてくれるかぃ?」
 堪り兼ねてそう言うと、京子ちゃんは沈んだ瞳で頷いた。
「実はね、俺も若い時、そう高校生だったなぁ……」