カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1
出発してすぐに外は暗くなってしまった。期待の景色は見えなくなった。
朝買ったブルーベリーがまだ残っていたので、それをほおばりながら物珍しげに列車の中を眺めた。座席の上の荷台には、MS.〇〇〇〇 3名という札が貼ってあった。
すぐ隣の席には六十代後半かと思われるご夫婦が。二人で座るには窮屈だろうな思えるような、お二人とも立派な体格をしていた。
このお二人、やはりしんどかったのか、夜、寝る頃には空いている座席に移り一人で座席に横になっていた。
この日の朝、グランビルアイランドを歩き、スタンレーパークでリスを探して歩き、その後夕食の買出しにスーパーを回った疲れが出てきて、いつの間にか3人とも眠ってしまったようだ。
しかし、この座席、二人がけに3人向かい合わせに座っているから、満足に足も伸ばせず、座席もリクライニングにはならず、直立したままだった…と記憶にはあった。
しかし、写真を見るとちゃんとリクライニングになれる席だったのだ。それを後ろの人に気遣って、あまり倒せなかったので直立したままのように記憶に残ってしまったのだろう。
あ~、これはキツイ!!
50を過ぎた私たち姉妹には、これで17時間の長旅はキツ過ぎるよ、美月!節約したかったのはわかるけどね。
事前に読んだガイドブックには、個室の寝台車もあるし、シャワー室もあるし、展望ビューの車両もあるって書いてあったよ…。
いい条件で、もう一度乗ってみたいな。
寝苦しい体勢だったため、何度も何度も目が覚めた。
何度目かに目が開いたとき、寝ぼけ眼に写ったのは、車窓のすぐ脇まで大きく迫っている赤茶けた岩肌だった。
『うん?これは何?』」
寝ぼけた頭で考える。ベールがかかった頭が、
『アッ!これがロッキー山脈!!』
『もうカナディアンロッキーの山の中に入ってるんだ!!』
これが、ロッキーか!!ベールのかかった頭が、シャッキーンとした。ワクワク。
と、遠くのゴツゴツした岩肌の急な斜面に…、
何かがいる~~~~~!
アッ、ヤギだ!きっとヤギだ!!
慌ててデジカメを出してシャッターを切った!
慌てたのと列車のスピードがあるのとで、ピントが合わせられずぼんやりにしか写っていなかった。けれど、確かにヤギだ!!
きっとマウンテンゴートか、いや、ビッグホーンシープか。
そうあって欲しい願いで強くそう思い込んだ!!
高いロッキーの山々の山頂付近の急な崖の上にスックと立っているヤギを見たときは全身がゾクゾクっとした。
緊張した。
……あ~、これは絵本「あらしのよるに」に出てくるシーンにそっくり。孤高のヤギ。ひとり逞しく生きる。
こういうところで生活しているヤギやオオカミを想像すると、「あらしのよるに」の背景もよくわかる。
ワクワク…!!
一気に期待が高まった。
「おねえちゃん、美月、起きて!!」
と、声を掛けて起こしたかったが、ぐっすり寝ているのでそのまま寝かしてあげた。
なぜなら、二人もきっと熟睡できずに度々目を覚まし、体の向きを変えたりしたであろうから。
私ももっと寝たかった。
でも、この先何かに出会えるかも知れないと思うと、その期待感で、もう眠れなかった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1 作家名:ねむり姫