カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1
列車に乗り込みシートに座る。程なくして、列車が動き出した。
時計を見ると午後8時…。
「え、え、え~ ??????…」
「出発は8時半じゃなかったん?」
「まだ30分も早いやん!」
「いくらアバウトやゆうても、ええ加減すぎるやん!!」
この日は1時間前に駅に着いたけど、出勤はいつもギリギリの私、いつものようにしてたら乗り遅れているわ、きっと。
「30分も早い出発じゃ、乗り遅れている人は多いんとちゃうかな?」
「どないなってんねんやろ」
「もう、いい加減やなぁ」
…なんて、早々と腰を下ろした安心感からか、私たちは口々に毒づいた。
列車はしばらくゆっくりと走って、まだVIAの構内と思しきところで静かに停まった。
「え、え、え、え~??????」
「何なん、これ!?」
どうなってるのかと、窓から駅の方を見てみた。
とちょうど、駅舎の上の雲が茜色に染まりその雲の中に、今、まさに太陽が沈まんとしているのが見えた。
空は夕焼けでまっかっかだった。
「きれいな夕焼けやね~」
と感傷に浸っていると、
やおら、ズズズズ~と列車がまた動き始めた。今度は駅舎に近づいていくではないか…。
あれ、あれ、あれ…?
遅れた人を乗せるために後戻りしてるんかなぁ…。
といろいろ考えてみたが…。
実は、このVIA鉄道、何両繋いでいるのか数えられないほど車両を長~く長~く連結しているのだ。
次の日の朝方、カーブに差し掛かったときに、何両あるのか数えてみようとしたのだが、10両まで数えた後は最後尾がまったく見えず、数えられないほど長く続いていた。
私たちを乗せた車両が先頭に近い方で、まだその後ろに何両も繋ぐために、一旦先に走り、そしてまた戻って連結したということだったのだ。
あ~、全然知らなかったなぁ。所変われば…だなあ。
週に3本しか走らないからたくさん引っ張って走るんだ。
そうこうしているうちに、列車は再び動き出した…。
え、え、え~!!今度は何!?
また発車のベルもアナウンスもなしだよ~。
時刻は午後8時半。
今度こそホントの出発か…!?
ほんまにこのVIA鉄道はビックリさせられるなあ。
でも、ともかく美しい山々と湖と動物たちが待つカナディアンロッキーへの一歩を踏み出したのだ。期待わくわく、自然と頬が緩んでニヤリとしてしまった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1 作家名:ねむり姫