カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1
キュッキュッキュ、無口になった3人の耳に、何かが擦れる音がかすかに聞こえてきた。
しかも、かなり規則正しく鳴っていた。
林の中の鳥の声でもなさそう。
「何の音?」
「ちっちゃい子の音が鳴るサンダルみたいやん。美也のサンダルか?」
確かに、歩くたびに私の近くで聞こえる。
「…ン?私かな…。」
サンダルかなぁ。いや違う。
リュックかなぁ。いや違う。
バックや!!
ショルダーバックのベルトを引っ掛ける金具と金具がきしんで鳴ってる音だとやっとわかった。それからは鳴らないように手で押さえながら歩かなければならなかった。
目的地が見えないということはそんな細かなことにまで気を遣わなければならなくなるんだ…。
同じ風景の連続に、だんだんと喋ることもなくなった。
まだか、まだか、まだ着かないのか、家の屋根さえ見えない…。
そんな心細さとイライラで三人とも喋る元気もなくなっていたのだった。
足もそろそろ限界だった…。
もうすぐ1時間になろうかという頃、左下にやっと家の屋根が見え、街並みが広がっているのが見えてきた!!
やっとだ!!
崖の方に小さな道があったので、崖を一気に下りる道はないものかと確かめたが、ダメだった。
その道は街には続いてはいなかった。
しかたなく、また同じ車道をずっと歩き続けた。
「美月ちゃん!そんな高いヒールで1時間も坂道を歩いて足痛くないの!?」
先を歩く美月の足元を見て、そう声をかけた。
美月はヒールの高いサンダルを履いていた。
私は低いヒールのサンダル。
姉はペタンコ靴だ。
三者三様の靴で歩いていた。
美月は、
「慣れてるから、この方が疲れへんのよ」
と、スタスタ先頭を歩いていく。
若いし、歩き慣れてるからだろう。ここでも歳の差を感じてしまった。
やっと坂道が終わり、住宅が建ち並ぶ区域に入った。
その辺りに建つ家々の珍しさで、キョロキョロ…。
立ち止まり、パチリ…。
またキョロキョロ…。
立ち止まり、パチリ…。
家の前には必ず背の高いもみの木が立っていて、大きな煙突もあった。
その煙突は、バンガローで見た小さなものではなく、1辺が1メートルぐらいの石造りの頑丈な煙突もあった。
昔、幼い頃、田舎の家にあった細長く丸い煙突を見ながら、こんな細い中にサンタさんはどうやって入ってくるんだろう、と真剣に考えたものだった。
しかし、ジャスパーの家の煙突は大きくて、中もかなり広そうで、これなら太ったサンタさんでも入れそうだと、妙に納得するほどの煙突だった。
もみの木があるのもクリスマスを連想した。まだ8月だったが…。
エンジの煉瓦とこげ茶の壁の可愛い教会も道路のすぐそばに建っていた。
ジャスパーの家々には垣根や塀はなく、家の周りには芝生を植えていて、とてもオープンな感じの住宅ばかりだった。
閉塞感はなく、町全体がのんびり、伸び伸びしているように感じた。
教会からしばらく歩くと、緑色の屋根のおしゃれな建物が見えた。
中学校と高校が一緒になった校舎のようだった。
校門というものがなく、ここもまたオープンな感じだった。
裏へ回って行くと、グラウンドの方はフェンスで囲ってあった。
グラウンドはすべて芝生だった。
サッカーゴールもあったから、ひょっとして、グラウンドとは別のサッカーコートだったかもしれない。
フェンスぎわには、白樺の木もあったりして、いい感じだ。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1 作家名:ねむり姫