カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1
山々は青く。ところどころ白い雲がかかっていた。
山あいから雨雲が上って、遠くの山に薄くベールをかけていくように見えた。いや、かぶったベールを剥がしていっているみたいだった。
頂上付近は、今、雨がやんだばかりという感じで、雨に洗われた空気は澄み切って清々しく、木々の緑も一段と瑞々しく感じた。
空気が美味しかった。
湖の、遠くに見える対岸には、水際ギリギリまで針葉樹の木々が生えている。
針葉樹は同じ形でお行儀よく並んでいるから、さらに美しく見える。
湖面は碧。水際に近づくにつれて、岸の浅瀬の小石がその透明度の高い水の底で揺らいでいた。
「わ~、綺麗な水!!」
「すっごい、透明なんや!!」
海の凪よりももっと静かに湖の水は揺れていた。
小さな桟橋があって、その先端は湖の中に延びていた。
美月と姉が歩いてその先端まで行った。
桟橋は揺れていた。
そこからボートに乗るのだろう。何艇かボートが繋がれていた。
ゆったりと、ボートに乗って湖を一周できる時間があったらなぁ。
バンクーバーでも思ったが、できるだけたくさん回りたいと欲張ったために、ホントに駆け足の旅になってしまった。
もっともっとのんびりとそれぞれの場所を満喫できれば、その土地の真髄が理解できたのではないだろうか。今回の旅行は表面をなぞっただけになってしまった。
それでも抱えきれないほどの感動をもらったのは確かだった。
パトリシア湖でしばらく遊んでから、いよいよダウンタウンに向かって歩き始めた。
最初は物珍しく、道端に生えている花や草や木や、すべての珍しいものに目が留まった。一つ一つが珍しかった。
車は殆ど走っていないので、道路の右端へ行って花を眺め、また左端へとフラフラと蛇行しながら我が物顔で山道を下っていった。
30分間だけだから……と。
20分ほど歩いた頃、
「あと10分ぐらいやね」
「そやけど、景色は変わらへんね」
どこまでも同じような林ばかりが続く…。
30分が過ぎた。……同じ風景……。
絵本から抜け出たような家も駅も何にも見えない…。
クマが出そうな雰囲気だ…。
「まだかなぁ」
「もう30分過ぎたよ。街なんか全然見えへんやん」
「歩いて30分なんて、ウソやん!!」
「フロントの人、え~加減過ぎるわ!!」
なかなか到着しないのと、昨日のVIA鉄道の出発時のことやらを思い出したら、お腹の空いていたのも手伝ってそのいい加減さに腹が立ってきた。
腹が立ったと言っても、車もタクシーも、全くと言っていいほど通らない。
とっても整備されたドライブウェイなのに…。
最後まで歩くしかないのだった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1 作家名:ねむり姫