カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1
荷物を入れて、一息ついた。時間は5時半頃になっていただろうか。
食堂車で食事をして以来、お昼は食べてなかったので、もうお腹はペコペコ。
「さて、食事に行こうか」
「そう、しよう。もうお腹ペコペコだよ」
美月が、
「ここはレストランがないから、どこかへ食べに行かないとあかんらしいわ」
「近くにあるの?」
「フロントは、もう一つ向こうの湖にはホテルがあって、そこにはレストランもあるん だって言ってた」
「どれぐらい歩くん?」
「10分ぐらいやって」
「ふ~ん」
「それか、ダウンタウンへ行くかだって。ダウンタウンにはたくさんお店があるらしい よ」
ダウンタウンは駅があったところだ。
「そこはどれぐらいで行けるん?」
「30分ぐらいやって」
さっき、タクシーで10分ぐらい掛かったけど、ほんまに30分で行けるんやろかと多少不安に思ったが、今度は下り坂ばかりやし、そんなものかなと半信半疑だった。
とにかく、グーグー悲鳴を上げているお腹をなだめるために、早く決めなくては…。
3人でしばらく迷ったが、30分やったら頑張ったら何とか歩けるか…。
「じゃ、ダウンタウンにしよう!!」
と決まった。
そう決まって、すぐに出発するのかと思ったら、美月は湖の方へ歩き出した。
美月は何も言わなかったけど、あとから思えばそれは正しい行動だった。
その時、私にはスケジュールが頭に入っていなかった。
次の日の朝は8時出発だったのだ。
朝、のんびり出来る時間はない。
だから、パトリシア湖を散策する時間はこの夕方の時間しか取れないのだった。
美月はそれをちゃんと頭に入れていたのだろう。
また、食事にダウンタウンを選んだのも正しかった。
それは、もう一つの湖にあるホテルで食事をしていると、ジャスパーの街も全然知らずに早朝出発となってしまうのだから。
また、今、考えてみるとわかるのだが、ホテルまでの道に街灯はない。
夕方、ホテルまで行く道はわかったとして、食後真っ暗の中を歩いて帰るのにはかなりの危険がはらんでいたのではなかっただろうか。車じゃないんだから…。
お腹mペコペコの頭では、到底そんなところまで考えられなかった。
やっぱり、ダウンタウンにして良かったんだ。
バンガローを出て、「パトリシアレイクバンガロー」の庭を歩いて行った。
庭の背の高い木々の間に、いくつかのバンガローが建ち、その真ん中には小さなプールや、滑り台や遊具や砂場があった。
子供連れでも遊べるように作られていた。
湖の方に目をやると、背の高いモミの木々の間から、雨雲のうすいベールを剥いだばかりの高いロッキーの山が見え、少し目を落とすと、……見えた!見えたのだ!!
碧の透き通った湖が!!
パトリシア湖は美しかった!!
それまでは車窓からばかりの眺めだったから、目の当たりに見た初めてのカナディアンロッキーの湖なのだ!
感激はひとしおだった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1 作家名:ねむり姫